経済(海外)

伊藤正直『なぜ金融危機はくり返すのか』、ジョセフ・E・スティグリッツ『フリーフォール』、宇沢弘文・内橋克人『始まっている未来 新しい経済学は可能か』

様々な本が積読状態となっている訳ですが、あまりそれには構わず買える時に購入しようということで、新たに購入した書籍のご紹介。 まず一冊目の伊藤先生の本ですが、こちらは現代の金融危機を考えるために、金融危機を横断的に捉える視点と歴史的に捉える視…

R.スキデルスキー『なにがケインズを復活させたのか?』(山岡洋一訳)

楽しみにしていたスキデルスキーの最新作。原題はKEYNES:THE RETURN OF THE MASTERなわけですが、この題名からはヨーダを連想するのは仕様でしょうか。第二章あたり(淡水と海水とか、現代的なマクロ経済学への批判的視点の議論)あたりから段々と本領発揮な…

「世界金融危機」は終わったのか?(その2)

前回のエントリでは、世界経済の現状、特に今回の危機の震源地であった米国の経済状況を金融セクターと実体経済の二つの綱引きが続く状況と指摘した。つまり金融セクターはFRB・財務省による政策努力により信用危機を回避し、回復に転じている。ただしこの状…

「二つの大恐慌」の視点から

もう一ヶ月前になるが、EichengreenとO’Rourkeによる1930年代の世界大恐慌と今回の危機との比較分析がvoxeuにアップデートされている。 前回(6月)の更新時点と比べると、新たに追加されたデータから見えてくる景色は異なってくる。詳細は該当のエントリを…

Reinhart and Rogoff, This Time Is Different

既に各所で紹介されている模様ですが、ラインハートとロゴフによる「This Time Is Different」をやっと購入しました。この本は副題にもあるとおり、過去800年(西暦1200年!)間の歴史の中で生じた金融危機の経験を数量的に類型化し、特徴を掴みながら実証的…

IMF WEO (2009年10月)から

本日公表されたWorld Economic Outlookの最新版。ざっとChapter1及び2.を確認した感想は以下の通り。個人的にはChapter3は読みたいところ。 世界経済全体は回復が鮮明となり、2009年はマイナス1.1%だが、2010年は3.1%成長。 7月時点の予測と比較して、それ…

「世界金融危機」は終わったのか?

恐らくこれから年末にかけての話題といえば、世界的な景気後退がどの段階で収束し、我が国も含む世界経済がどのような形で回復に転じていくのかということだろう。 確かに23日のFOMCの声明によれば、米国経済は深刻な落ち込みを経て回復しているという認識が…

世界同時不況においてなぜ日本の打撃は深刻なのか?(その1)

Voxeuにも掲載されているが、深尾・袁両氏による分析(深尾京司・袁堂軍「経済危機で日本はなぜこんなに大きな打撃を受けたのか:アジア国際産業連関表による分析」(Hi-Stat Vox No.8)(http://gcoe.ier.hit-u.ac.jp/vox/008.html))は、リーマンショック…

米国長期金利上昇をどうみるか?

各種報道*1によれば、バーナンキFRB議長は6月3日の下院予算委員会での証言において、長期国債金利及び住宅ローンの固定金利は最近上昇しており、その原因として1.大規模な政府の赤字に対する懸念、2.経済見通しに対する楽観的な期待の醸成、3.質への逃避に向…

大恐慌期のデフレから世界経済はどのようにして脱却したのか?

2008年9月のリーマンショック以降の金融危機と実体経済の悪化は、2009年6月の現時点において与謝野大臣の「景気底打ち」発言に見られるように少し明るさが見られる、という状況なのかもしれない。尤も、2009年1〜3月が底打ちのタイミングであったとしても、…

ポール・クルーグマン(大野和基訳)『危機突破の経済学』

クルーグマンの話題のついでということで(笑。報道2001でも書影が出ていましたね。PHPから出版されるということは、Voice等での対談+αを纏めたものではないかと思います。論説の内容もさることながら、楽しみなのは若田部先生が解説を書かれている点でしょ…

猪木武徳「戦後世界経済史 自由と平等の視点から」

稲葉先生が取り上げていらっしゃった猪木先生の新著。本屋で早速見て即買いしました。戦後の世界経済の流れを特徴的な出来事を中心にして論じていくというものです。申すまでもありませんが、著者の深い学識と思想が行間からにじみ出て、読者に深い味わいを…

John B. Taylor, Getting Off Track:How Government Actions and Interventions Caused, Prolonged, and Worsened the Financial Crisis

テイラー先生の新著。円高効果もありまして邦書を買うよりも安価なので、早速購入しました。内容はというとタイトルどおりな訳ですが、政府の政策や介入がいかにして金融危機を引き起こし、長期化かつ悪化させているかというものです。 金融危機に関して様々…

貨幣乗数について一言

何やら一日数件しかアクセスの無いこの場末ブログがえらい勢いでアクセスしていただいているのですが、付利が付いている状況で不良資産を買い上げてマネーを供給すればこのような事態になるのは自然なことです。世界的な金融危機の状況で銀行がお金を貸そう…

完全失業率、消費者物価指数(3月)&海外動向

本日のニュースを見ての雑感ですが、段々とより深刻化の度合いが増してくる感じですね。完全失業率は4.8%、消費者物価指数は前年同月比マイナスですか。原材料価格上昇に伴う影響が剥落すれば元の木阿弥となるのは当然で、この点は以前から予想していたとこ…

Academic Earth

これ凄いなぁ。なんと無料でシラー先生やブラインダー先生のお話が聞けてしまうという代物。 これぞまさに駅前留学じゃなくてネット留学(笑) 経済学だけではなくさまざまな分野もありますね。http://academicearth.org/

ホール/ファーグソン(宮川重義訳)『大恐慌』

極めて不謹慎な言い方なのかもしれないが、現代ほど「マクロ経済学」を学び、「なぜ」を突き詰めていくビックチャンスは無いのかもしれない。 特に我が国の場合は、長期停滞への片道切符(現状では)の第一ステージとしての「失われた10年」、そして第二ステ…

岩田規久男「金融危機の経済学」

岩田先生の新刊は、現在進行形の経済状況、特にサブプライム危機→世界金融危機→実態経済への波及と流れる状況について書かれたものです。検討されているのは1.サブプライムローン問題の本質は何だったのか、2.それはなぜ世界金融危機を引き起こしたのか、3.…

AMERICAN ECONOMIC JOURNAL:MACROECONOMICSから

今年から刊行されることになった標記の雑誌ですが、なかなか面白そうな論文が並んでいますね。ミクロ版や政策分析、応用経済学といった分野についても刊行される模様です。 今月号は創刊号ということですが、目に付くところでもBlanchard、R.Lucas、Gali、Jo…

矢野浩一「流動性の罠の下での動学的確率的一般均衡モデルと自己組織化状態空間モデリング」(ESRI Discussion Paper)

DSGE祭り(汗も含めて、矢野さんのこのテーマのお話は伺っておりますが、ついに研究成果がESRIのDPとして登場したとのこと。各国がゼロ金利近傍に到達しつつある現状では、このDSGEモデルの持つ重要性は格別でしょう。流動性の罠の状況を含むデータに基づく…

AER(Vol98 NUMBER 5)から数点

昨日やっとこさAERの最新号が届きまして、ざっと見ているところです。今回個人的に目を通したい論文は以下のようなところでしょうか。○Zombie Lending and Depressed Restructuring in Japan (Ricardo J. Caballero, Takeo Hoshi and Anil K. Kashyap)○Tradi…

メモ2題

フェルドシュタイン先生のEUについての考察。このあたりは先日まとめたBuiter教授の視点にも関連するところ。(http://www.voxeu.org/index.php?q=node/2867) 後は、カバレロ教授の論文二点。これも面白い。(http://www.voxeu.org/index.php?q=node/2827、…

Quantitative and qualitative easing again(by Willem Buiter)を読む。

ft.com/maverecon所収のBuiter教授の論説*1は、Qualitative easingとQuantitative easingの違い等々について丁寧に纏められた論説である。かなり長文なので詳細はお読み頂くとして、論説の肝となるのは、先日のエントリで取り上げたCredit Easingは、Buiter…

なぜ原材料価格高騰は過去と比較して深刻なダメージを与えなかったのか?

1.BlinderとRuddによるサーベイ BlinderとRuddが原材料価格高騰が過去のオイルショックと比較して深刻なダメージをなぜ実態経済に与えなかったのかを自らの研究を含む近年の研究からサーベイしている(Blinder and Rudd,”Why the recent oil shock wasn’t ve…

What Obama Must Do(by PAUL KRUGMAN)

メモ代わりということで。後でいくつか追記するかもしれません。 (http://www.rollingstone.com/politics/story/25456948/what_obama_must_do/print)

08年9月以降の米国の金融政策をどうみるか?

いくつか疑問の点もあるのだが、標題のテーマについて例の如くデータを用いながら少し整理してみることにしたい。以下で見ていきたいのは、昨日エントリしたバーナンキのスピーチ等で論じられているCredit Easingにも関連するが、08年9月以降の米国FRBの政策…

バーナンキ総裁の1月13日LSEスピーチ(The Crisis and the Policy Response)から

1月13日のLSEでの講演*1について様々な報道が出ているが、どうも報道を読むと肝心要だと感じる部分に言及されておらず読みにくいので、元のスピーチ原稿から抜書きしつつ、適度に意訳しながら纏めてみたい。またFRBの金融政策を考える上でも報道では取り上げ…

大恐慌時の米国労働市場をどう考えるか?

池田先生がブログ*1でCole and Ohanian(1999)*2で記載されている製造業実質賃金の値を見ながら分析をされている。以下、Cole and Ohanian(1999)で纏められている実質賃金や他のデータソースも参考にしながら大恐慌時の米国の労働市場について簡単に見ていく…

丸山徹『ワルラスの肖像』

まだ未見でありますが、丸山先生のワルラス論は楽しみ。各章の内容・構成を見る限りだと、様々な経済学者とのかかわりや一般均衡理論そのものの内容についても解説も取り入れられているような雰囲気ですね。面白そうです。 第一章 一八七〇年前後 ――ウィーン…

あけましておめでとうございます!

今年も宜しくお願いいたします。東京は暖かくて良い気持ちです。 ブログ活動も頑張っていきたいと思いますが、恐らく(出来れば)リアルの場で皆様のお目に留まるような論考・書籍等々を量産できればと思っております。来年の今頃には今回の経済的な苦境には…