東洋経済12/27−1/3新春合併特大号「2009「全解明」」

 今回は東洋経済、ダイアモンドともに特大号だ。さすがに読みがいがある。東洋経済の方は激変する世界を先取る!と題して様々なテーマについて論説が掲載されている。詳細はお読み頂くとして(笑、インタビューではブラインダーのものが興味深いだろうか。
ブラインダーが指摘する、以下の点には同意するところだ。長いが少し引用すると以下のとおりとなる。

 今回の危機には二つの側面がある。一つは金融面だが、今回の一連の金融混乱にはまったく先例がない。したがって、適用できる手引書を持ち合わせている人はいない。そのためFRBは堤防のあちこちに穴が開くたびにそれをふせぐ方法を模索し続けて、次から次へとさまざまな手法を繰り出しているのだ。・・・・もう一つは実態経済だ。・・・ケインズの時代からリセッションの対処方法はわかっている。需要の急激な収縮に対しては、需要の掘り起こしによって穴埋めする必要がある。政府はまず金融緩和政策を採ることができ、実際にできうるすべての対策が講じられた。第二には減税、第三には財政出動がある。こうした対策には良く知られた手引書がある。・・財政出動は有効だが、かなり大規模に実施しなければならない。二年続けてGDPの2%程度の規模が必要だ。一年あたり約3000億ドル(約27兆円)というところだ。・・・バーナンキ議長はよい仕事をしてきたと思う。7000億ドルの不良債権買取計画はうまくいっていない。・・・バーナンキ議長は、まさに海図のない水域を航海しているようなものだ。もちろん、彼が非常に積極的かつ創造的に問題に対処していることは高く評価したい。・・・議長として極めて積極的な対策を講じてきたかにもかかわらず、事態は1年前よりも悪化しているからだ。

 恐らく、2008年決定版 経済・経営書ベスト100に掲載されている竹森教授のインタビューにもあるように、オバマ政権に本格的に移行する段階で、米国は大規模な財政政策(公共投資&減税策)とFRBによる国債引き受け(高橋財政とは異なり、民間部門への売却を伴わずにシニョレッジ効果を最大限に活用)、FRBのバランスシートを守るためのボンドコンバージョン(金利スワップ)の実行、期待へのコミットメントの明示化・物価水準目標もしくはインフレ目標の採用に踏み切るでしょう。勿論段階的に政策を発動する可能性もありえますが、徹底的な財政・金融政策によりレジーム転換を図り、景気後退を食い止める作戦を取るものと予想される。このような段階で我が国はどのような政策を発動していくのか、現状では竹森教授が言うとおり、我が国は大恐慌時のフランスのような事態になるのではないかという危惧が頭をよぎる。
 さて、「2008年決定版 経済・経営書ベスト100」の方は、ランキング5位までの著作を挙げると以下のとおりである。今年はサブプライム危機・金融危機関連の書籍が多いことが特徴だろう。昨年の今頃から考えると多くの人々がこのような事態になるとは予想していなかったのではないだろうか。幸いなことにいずれも全て読んではいるが、『資本主義は嫌いですか』については感想文を書いているのでそちら((その1)(その2)(その3))をお読みいただきたい。本書は平易に書かれているが、書かれているテーマは重い。2位の白川総裁の著作は現在の日銀の金融政策を考える上で示唆に富む。この本を読んで私は日本銀行が徹底的な金融緩和策を(ほぼ)行わないだろうという確信を持った。3位のガルブレイスの著作は29年の株価暴落の軌跡を描いたものだが、他の書籍で大恐慌の大枠をつかむとより理解が深まるだろう。同じ3位のチャールズ・R・モリスの著作については現状の問題点の詳細を掴むには良い本だろう。ただし、同様の書籍は邦語文献でも多く出ているので好み次第といったところだろうか。5位の小幡准教授の書籍は分かりやすいが、『資本主義は嫌いですか』を読んだ後だと新鮮味は薄い。個人的な趣味の違いかもしれないが、「キャンサーキャピタリズム」と言われてもなぁ・・という感じ。

1位:竹森俊平『資本主義は嫌いですか』
2位:白川方明『現代の金融政策』
3位:ジョン・ケネス・ガルブレイス『大暴落1929』
3位:チャールズ・R・モリス『なぜ、アメリカ経済は崩壊に向かうのか』
5位:小幡績『すべての経済はバブルに通じる』