RIETIの新着論文

いずれもまだ内容に目を通しておりませんが、概要を見る限りでは面白そうです。
土居先生、竹森先生の論考ともに感想は後でまとめてみたいところです。



政府債務の持続可能性を担保する今後の財政運営のあり方に関するシミュレーション分析

http://www.rieti.go.jp/jp/publications/summary/06040008.html

我が国の政府債務の持続可能性が懸念される中で、最近、我が国のSNAから簡単な会計的計算を基に推計し、我が国政府の純債務残高で見ると深刻な規模ではなく、十分に実現可能な政府収入対GDP比の水準を確保することよって政府債務は維持できる、と主張するBroda and Weinstein (2005)が発表された。しかし、このシミュレーション分析には楽観的な設定も含まれているため、本稿ではBroda and Weinstein (2005)を再検証することを通じて、我が国の政府債務の持続可能性がどのような政策運営によって担保できるかを、より客観的に考察する。
Broda and Weinstein (2005)を忠実に再現した上で、さらなる設定の変更を加えたシミュレーション分析を試み、次のような結果を得た。政府債務で、償還財源に充当することを想定していない中央政府や地方政府の金融資産を純債務として相殺しなかったり、直近の財政悪化を加味したりすると、政府債務を持続可能にするには、Broda and Weinstein (2005)の結果よりも高い政府収入対GDP比が必要であることが明らかになった。また、それは目下の30%程度から36%前後に引き上げなければならず、政府債務を持続可能にするには、社会保障給付の抑制とともに相当程度の増税が必要となる水準であることが示唆された。

金本位制のもとでのレジームの役割と物価への波及過程

http://www.rieti.go.jp/jp/publications/summary/06040005.html

本論文では、1890年代のアメリカと日本に焦点を当て、通貨体制、レジーム変化の予想、正貨準備といった要因が景気と物価の変動にどのような影響を与えたかを考察する。世界中が金本位制に収束していく中で通貨としての「金」が希少になったことで、この時代の世界的なデフレ傾向が発生したわけだが、当時の日本の通貨は「銀」であったためデフレを逃れた。本研究では銀安の傾向による正貨準備の増加が、日本がデフレを免れた要因であることを検証した。他方でアメリカは、デフレを逃れるための銀本位制の政治的な模索が1890年代初頭におい行われたために「通貨信用の喪失」を招いて、1890年代初頭に深刻な不況とデフレを将来した。この研究では、「資本逃避」から「金準備の減少」という連鎖が「クレディット・チャンネル」を通じて、実体経済と金融セクターにマイナスの効果を及ぼしたメカニズムを明らかにした。また1897年以降のアメリカ経済の回復においても「クレディット・チャンネル」が、さらに一層重要な働きをしたことが明らかになった。