インフレを巡って

リアルの話ではなくゲームの話です(笑)。趣味と実益を兼ねてネットゲーム*1であるFFXIファイナルファンタジーXI)をプレイして3年が経過しました。この間、システム面の追加や拡張ディスクの追加など様々な変遷があり、始めた当初とは内容がかなり異なるゲームへと変化している訳ですが、最も変化が激しいのは物価です。販売&運営元のスクウェア・エニックス*2では物価変化について具体的な数値を公表している訳ではありませんが、プレイヤーに共通する実感として急激な物価上昇が生じているのは明らかでしょう。以下、なぜインフレが進むのか(進んだのか)、そもそもインフレは悪なのか、その場合インフレを是正する手段はあるのかについて少し考えてみたいと思います。

1.FFXIにおける経済
 インフレとはマクロレベルでみた物価水準の上昇であり、裏返せば貨幣価値が下落することを意味しています。貨幣価値の下落が生じるには経済の規模と比較して流通するお金の量が過大であることが必要です。

FFXIにおいて貨幣を得る為の手段(=供給活動)は大きく以下の4つです。

  • ?モンスターを倒して得たアイテムの換金、貨幣を収集するという手段
  • ?クエスト・ミッション・BCをこなして得たアイテムを換金するor報酬を得る
  • ?合成・釣り・栽培によって得たアイテムの換金
  • ?競売での投機行動

これらの中で時間あたりに得られる貨幣量が最も少ないと見込まれるのは?の手段です。次が?の手段でしょうか。?の投機行動は将来高額となるアイテムを安価で買い入れ、それを高値で売り抜けるという行為ですが、バージョンアップ時の新アイテムの導入情報、インフレ期待に依存する部分も大きくリスクはあります。この中で最も確実な貨幣取得手段は?合成・釣り・栽培です。合成とはプレイヤーが素材を調達し、一定のレシピにそって組み合わせることで別の商品を作りだす事です。商品の種類に応じて調理・裁縫・鍛冶・練金等々の合成があります。但し一定のレシピに従えば即作れるという訳ではなく、高価な商品を作る為には技能(スキル)が必要です。釣りにおいてもスキルが上がれば短時間で大量の魚を釣ることが可能となります。スキルを上げていくことは途方もない時間を要しますがコツコツと続けることで確実に上げることが出来、それにより多額の貨幣を得ることが出来るようになります。

 一方、得た貨幣を元にアイテム等を購入する際には、競売、ショップを利用します。競売は各プレイヤーが一定の手数料を支払う事で販売したい価格にてアイテムを競売に卸し、購入者は過去の履歴を見ながら購入したい金額でアイテムを競り落とすという仕組みです。当然法外に高い値段で卸すと売りたいアイテムは売れないという事態に陥ります。
 ショップはNPC(ノンプレーヤーキャラクター)によるアイテムの販売です。様々なものが販売されていますが、競売よりも安価に購入出来る場合に利用するというのが通常の形でしょう。□eとしての貨幣吸収手段はこの他にイベントでの参加料徴収などがあります。

2.インフレをもたらしたもの 
 ある時まではFFXIの経済は安定して推移していたように思います。急激なインフレが生じた理由は主に、a)RMT、b)プレイヤーレベルの向上、があります。
 a)RMTとはリアル・マネー・トレードの略ですが、インターネットを介してゲーム内で流通する貨幣・キャラクターデータをリアル通貨で販売・購入する行為を指しています。あるRMT業者が貨幣を得る手段は最初のうちは1.の?が多かったと思われますが、徐々に高スキルを獲得し?により金を生み出す事に成功しています。生み出された貨幣はネットを介して一般のプレイヤーに供給され、それが高額商品の需要を喚起させるという形となり新たな貨幣が流通していく訳です。
 もう一つの理由はb)プレイヤーレベルの向上でしょう。先に挙げたように合成・釣り・栽培といった手段はスキルが向上すればするほど多くの貨幣を得ることが可能です。また同時に1.の?、?においてもプレイヤーのレベルが向上すればより多くの貨幣を得ることが可能となります。リリースされて4年が経過した今、平均的なレベルは向上しており、多くのプレイヤーが高スキル・高レベルを有している段階では構造的にインフレを内包する経済になっているのは仕方ないのかもしれません。

3.インフレは悪か
 以上の議論を見ていくとプレイヤーの平均的なレベルが向上している段階ではインフレは仕方ない事かもしれません。ただインフレが進んだ事の背景としてRMTがあるのであれば、これはFFXIの経済を歪めているといえると思います。そもそも、RMTはゲーム内のルールにおいて禁止されている行為ですし、RMT業者がリリース対象外からアクセスしているというのであればアクセスを制限することが必要でしょう。□eもRMTおよびそれに付随する禁止行為に対しては遅ればせながらアカウントの剥奪などの措置をとっています。以上の措置はさらに徹底して進めて欲しい所です。
 またもう一つの理由である、ゲーム内でのスキル・レベル向上に伴うインフレという問題ですが、ゲーム内でのプレイヤーが全く変わらないのであれば(平均的には)全ての人の有する貨幣量が増えている為問題はないのかもしれません。但し、ゲーム内でのプレイヤー数は変動しています。インフレの進行は新規プレイヤーと既存プレイヤーとの格差を拡大させ、はたまたプレイヤー数の縮小へと繋がる可能性が高いと考えられます。
□eが安定的な物価水準を確保するには、RMTの取り締まり&禁止行為の罰則の徹底に合わせて、貨幣回収の為のゲーム内システムを充実させることが必要でしょう。例えば食品、薬品の中で必需財となっているもののいくつかについてはショップでも競売価格よりも割安で提供するようにし、必需財の価格を安価にする事が必要だと思います。

(6/21追記)
以上でエントリした記事の中で「インフレの進行は新規プレイヤーと既存プレイヤーの格差を拡大させる」という記述についてid:takahata_kazuoさんからコメントを頂きました。インフレの進展は所得格差を縮小させるという点には異存はないのですが、ではなぜ私も含むプレイヤーがインフレが進む事で格差を感じているのか、その理由を考えてみました。格差の拡大を感じているのは、新規プレイヤーと既存プレイヤーの間の所得格差ではなく資産格差、つまり既存プレイヤーが所有しているアイテム・装備の価格が大きく上昇しており、現在新規プレイヤーが既存プレイヤーが所持している装備を購入するにはこれまでよりも多くのコストが必要になるのではという事です。ffxiの世界は不思議なもので、最も低レベルの時期の金稼ぎ手段であるモンスターを倒した事で得るギルの値はインフレに関係なく固定です。また初期レベルにおける合成で得られるアイテムの価格は必需財、およびさらなる高級品を作る為の素材であるために高レベル(既存)プレイヤーが所持している装備類の価格上昇ほど価格は上がっている訳ではありません。頂いたコメントを元に後日もう少し考えてみたい所です。TBありがとうございましたm(_ _)m

*1:インターネットを介してプレイヤー同士が繋がり、クエスト、ミッションを行っていくというもの

*2:いわゆる□e