渥美恭弘「近年における「構造改革」と景気回復との関係についての考察」

 渥美氏のDP。ざっと斜め読みですが、論争に深みが出てきている(と自分は思っている*1)今となっては、「マクロ経済政策派」と「構造改革派」の二分法でどこまでツッコめるのは微妙だと思う一方で、議論の整理(および今後のツッコミ所を把握する)にはとても面白い論文です。

詳細はhttp://www.mof.go.jp/jouhou/soken/kenkyu/ron170.pdfをご覧下さい。

 僕の感想は、渥美氏の言うほどデフレは回復しておらずGDPギャップも内閣府公式発表ほど良くなっておらず、「構造改革なくして景気回復なし」ではなく「景気回復により結果として構造改革が進んだのでは?」といった「マクロ経済政策派」のそれです。そして、需要と供給の単純な二分法ではなく両者の相互連関を意識した議論を進める際に「セーの法則」同様、「有効需要の原理」も忘れていただきたくないものです。投資および雇用の短期的・長期的な影響についても同様で、短期的および長期的な需給への影響経路およびそのインパクトと、インパクトを与えるための手段としてマクロ経済政策と構造改革といった政策メニューをどう仕分けするのかが重要なんでしょう。*2

*1:多分ざっと拝見した限りでは渥美氏も同じ感想ではないかと思います。

*2:心情的には創造的破壊をしたら新しい需要が出てくるから我慢してね、というのはあまりにも酷い言い草で、実証的に効果が不明&よく分からん構造政策より金融政策を試してみても良いじゃない、というのが僕の思いですね。