日銀利上げ見送りについて(感想)
今回利上げを見送ったことは常識的な判断だと多くの方が思うところでしょう。政策判断の基準として参照されるCPIコア指数は政策金利を0.5%に設定した2月以降、直近値の6月まで対前年同月比でデフレとなっています。(http://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/pdf/zenkoku.pdf)現状の景気動向に大幅な変更がない限り、この状況でどのようなメカニズムで安定したインフレが達成できる状況になるのかが個人的には全く分かりません。
まず日銀は、フォワードルッキングな政策判断の中で頭に描いている物価の見通しで何ヵ月後に安定したインフレ局面に入っていくのか、物価の経路についての見通しがこの5ヶ月間でどのように変化しているのか、もしくは一定であるのかという点についてきちんと説明をすべきでしょう。本日アップされている金融経済月報(基本的見解)では「より長い目で見ると、・・・プラス基調を続けていくと予想される」とあります。問題なのは「より長い目」がどの程度のスパンなのか、それがデータの蓄積に伴ってどのように変化しているのか、もしくは一定と考えられるかということを説得力を持って説明するということでしょう。それこそが、フォワードルッキングな政策判断の意味を市場に認識させる唯一の確実な方法だと思います。
金融経済月報(基本的見解)を読むと、先月(7月)との違いは、為替・株価についての判断です。米国サブプライム問題を契機にして、8月利上げ観測が薄れ今回の判断もそれに沿ったものになったわけです。SNA等からは我が国経済の外需の依存度が高まっているとの結果も得られていますが、円高による輸出への下押し効果や企業への影響がどの程度か、さらには米国、EUの金融政策といったところをどう見込むのかも合わせてきちんと説明して欲しいところです。個人的には、米国のサブプライム問題の収束には3ヶ月〜半年程度の期間が必要でしょう。恐らく今年中に一回はFFレートは利下げするものと見込まれます。*1EUについては利上げ話もあり利下げ話もあると思いますが、現状のレートからさらに自国通貨が高まった場合、ドイツ等の外需だのみの諸国の経済成長が担保されるのかがちょっと良く分かりません。政策協調という意味ではEUが近いうちに利上げするとの観測は利上げを念頭に置いている日銀にとっては好材料でしょうが、貿易面への影響度からすると米国の動向がメインの問題でしょう。
結局個人的な「べき論」としては、日銀は自らが公表した政策判断の原理原則に沿って、消費者物価指数が安定的にプラスになるという状況にならない限り利上げは避けるべきでしょう。日銀ウォッチャー風に言えば、福井総裁在任期間中に利上げはあっても一回、でもそれは米国次第ということではないでしょうか。*2 さてご覧の方々はどのようにお考えでしょうか?
*1:元々僕は利下げアリ論者でして・・・。例えばhttp://d.hatena.ne.jp/econ-econome/20070730の部分とか。大僧正には失礼ですが@@
*2:不謹慎ながら実は2ヶ月前くらいにある方と賭けをしていまして、その方は「福井総裁在任期間中までに政策金利1%達成」を主張され、僕は1%未満を主張して、負けた方が年度末に食事に誘うというお話があるのですが・・・とりあえず僕が有利な状況(笑ですね。