円高が金融危機を救う?
リチャード・クー氏のvoice3月号論説(http://www.php.co.jp/magazine/voice/)。
まずクー氏はユーロ高の原因として、経済が安定して拡大していること、貿易収支に問題がないこと、ECBの通貨・金融政策が透明であること、という三点がユーロへ資金が向かう大きなポイントであると指摘している。
この指摘自体は至極真っ当なものなのだが、続けて、ドルのハードランディングを是正するために日本・中国が通貨高を容認・宣言すべきという指摘は奇異なものである。我が国について述べれば、クー氏は現在の我が国の為替レートがフロート制であることを忘れているのだろうか。「円を15%上げる」と宣言することで、1ドル90円〜95円の水準になるとしたら、00年代の史上最大規模の円売り介入などしなくても良かっただろう。
クー氏は更に続ける。日本政府のスタンスが変わり、円高を歓迎していると示せば、日本に資金が流れ込んで株高になるというのだ。円高が進むことで企業の業績が悪くなると見込まれる中で誰が株を買うというのだろうか。クー氏自らが指摘しているとおり、ユーロ高の原因は、経済が安定して拡大していること、貿易収支に問題が無いこと、通貨・金融政策が透明であること、の三点である。我が国の経済成長に占める外需の寄与が高いといわれる中で、円高による輸出減少は、「経済が安定して拡大していること」を阻害するのではないだろうか。これでは話が逆だろう。