アラン S. ブラインダー『中央銀行の「静かなる革命」』

 ブラインダー教授がイェール大学で行ったオークン記念講演の模様を纏めたもの。中央銀行に関する論点として、1.中央銀行の透明性、2.中央銀行の意思決定の方法(委員会による運営)、3.中央銀行と市場との関係の三つにつき論じられています。最後に植田先生の解説付きですね。
 ブラインダー教授自身の議論は、1については透明性を高めることは重要、2については「純粋なグループ指向の委員会方式」は望ましい、3については市場からの情報を得るということは問題はないが、市場から助言を得ることに伴う危険性について用心すべき、というものでしょう。
 植田先生も解説で述べていますが、2に絡んで独裁者の意思決定より多数者の意思決定が優越するのかという点は議論があるところでしょう。1の透明性の話題も含めて、情報公開の仕方にも注意を払う必要があります。3については、「市場の完全な追従者」に中央銀行がなってしまうのは不味い。中央銀行の意思決定の結果としての政策発動が、市場の要望の下でなされたと受け止められないようにするにはどうしたらよいのか、「市場のコンセンサス」という魔物とどう対峙するのかという点は興味深いところです。

中央銀行の「静かなる革命」―金融政策が直面する3つの課題

中央銀行の「静かなる革命」―金融政策が直面する3つの課題

http://crossreview.jp/econ_econome/reviews/4532353114