平成20年7〜9月期四半期GDP速報(1次速報値)から
1.各指標の整理
本日、ESRIから2008年の7〜9月期のGDP速報値が公表された*1。実質GDP成長率は−0.1%、名目GDP成長率は−0.5%となっており、2008年4〜6月期と比較すると下げ幅は小さくなっている。
内需・外需の寄与度でみると、7〜9月期の実質GDP成長率における内需寄与度はプラス0.1%、外需寄与度はマイナス0.2%、名目GDP成長率における内需寄与度はプラス0.3%、外需寄与度はマイナス0.8%となっている。4〜6月期では内需及び外需の寄与度が共にゼロもしくはマイナスであったが、内需の寄与度がプラスに転換し、外需の寄与度のマイナス幅が縮小しているという点が特徴である。
内需の増加の理由は4〜6月期でマイナスとなっていた民間消費支出、民間住宅投資、公需(政府最終消費支出、公的固定資本形成)がプラスに転換しているためである。しかし民間企業設備投資は名目・実質共にマイナスとなりさらにそのマイナス幅が拡大していることに注目すべきである。外需については、4〜6月期でマイナスであった輸出入がプラスに転換していることが特徴である。後で補足するが、一次速報ベースの輸出入は国際収支統計の最終月の数値が反映されていないため、貿易統計等から補外推計されているため二次速報値以降で修正がなされる可能性が高いだろう。
GDPデフレータの動向は、4〜6月期と同様にマイナス1.6%、国内需要デフレータは4〜6月期と比較して更に伸びが上昇して1.3%、民間消費デフレータも上昇し0.9%の伸びとなっている。今後輸入デフレータの下落と共に民間消費デフレータをはじめとする国内需要デフレータの伸びも沈静化していくものと考えられる。原油をはじめとする原材料価格は下落しており、今後半年から1年間程度をかけてGDPデフレータはゼロ近傍に向かっていくだろう。
問題はそのタイミングで内需デフレータがプラスの伸びを維持し続けるかどうかである。原材料価格高騰の効果が剥落することで内需デフレータがプラスの伸びを維持できず、伸びが停滞していくとなれば、今度は内需デフレータがマイナスに転換していく中でGDPデフレータがマイナスとなるという現象があらわれていくことになるだろう。
2.一次速報値をどうみるか?
今回の結果から着目すべき点は主に二つあると思う。
一つは民間企業設備投資が2四半期連続してマイナスであり、かつマイナス幅が拡大しているという点である。需要側推計値(法人企業四半期統計)が考慮された場合に2次速報値でプラス改訂される可能性もあるものの、このマイナス幅の拡大が真であるのならば、設備投資の低下は今後内需の低下圧力として我が国経済に影響することも考えられる。過去の不況局面で共通するポイントは民間設備投資のマイナス幅の拡大がラグを経て内需、特に消費へのマイナスをもたらしていくという側面であり、第4四半期以降再び実質・名目成長率のマイナス幅が拡大する懸念もある。
もう一つのポイントは輸出入の動きである。先に記載したとおり、一次速報値の輸出入の数値は国際収支統計の最終月が利用できない。国際収支統計*2をみると、速報値ベースでは純輸出の基礎となる財・サービス貿易収支の値はマイナスであり、大幅な下落を示している。国際収支統計がアップデートされ、更にその結果が二次速報値に反映された場合に、より外需のマイナス幅が拡大する可能性もある。