小沢氏辞任に思う。
正直驚いた。というのは、なぜこのタイミングで辞任するか理由が分からないためである。
民主党内で小沢降ろしが本格化しておりやむにやまれずに辞任に至ったというのは考えがたいように思う。というのは、今回の騒動に際して小沢氏に批判的な立場であったのは民主党の中でも極々少数であること、そして次期代表を狙えそうな人材は執行部の中枢を占める人間であり、小沢氏辞任の後を受けて代表に就任する可能性は低いこと、もしくは次期代表候補といわれる人材は小沢代表を支える意思を示しており、かつ代表選にも出馬できないような人間ばかりだからだ。自らの党の代表を対立候補も立てずに信認した上で、本人が無実潔白と述べている中で辞任論を口にするような人間など別に気にする必要はないだろう。そういった人々の存在が今回の辞任会見に結びついたのならば、それは小沢氏が心配すべき話ではない。
そもそも辞めるより先にやることがあるだろうと私などは思う。小沢氏自身が主張しているように(本日の会見でも話していたが)自らが潔白であるのならば堂々と身の潔白を国民に説明し納得を得ることをまずすべきである。口下手だからとか様々な下らない擁護議論が民主党内で出ていたが、潔白だとわかっている事実を国民に納得できないような状況では、この難局の中で、かつ今度は絶えず抵抗勢力の抵抗にさらされながらの政治を行わざるをえないといった状況が予想される中での政権の運営などとても望めまい。自らに正義があるとわかっていることを堂々と主張し、納得を得られないような状況であったため辞めるという選択は国民のためではあるだろうが、そのような説明は無かったと思う。
解せないことはまだある。今国会会期中に辞任会見をすることで「会期中にこのようなことになり国民に申し訳ない」と発言するのならば、会期終了後に辞任すれば良かったのではないか。国民に迷惑をかけているという認識ならば、そうしないという選択肢をとることは(上記の理由も合わせて)小沢氏には可能だろう。これでは政権を途中で投げ出した福田氏や安倍氏を批判する資格はない。
更に解せないことを言うと、きちんと国民を説得できれば「自分の身を捨てて勝利する」といったことをしなくても民主党が勝利することは可能だろう。何しろくだんの事件が生じる前までは民主党絶対優勢の状況だったのだから。そう思うのならば事件が発覚した段階で自らの主張云々を通すといった自分の身を優先するのではなく、まさに「身を捨てて」即座に辞任すべきだったのではないのか。
民主党にとっては小沢氏が身を捨てて勝利できれば本望だろう。ただ国民にとってはそのような話はどうでも良いことである。重要な点は、国民にとって良い政治が為されるか否かという点であり、別に民主党が首班となり、二大政党制が実現すれば良い政治が為されるという保証は何処にも無いという事実である。80年前の昭和恐慌前後の状況はまさに二大政党制での争いがお互いの足を引っ張り合うことで空白を生み出し、政治への諦念をもたらしたのではなかったのだろうか。
言論で民衆を説得できないような政治家ならば早いうちに代表から退くべきという判断はありえるし、それは国民にとっては良かったのかもしれない。しかし、私にとっては驚きとともに、小沢氏のような政治家ですら代表として結局国民と正面から向き合うことは出来なかったのかという思いも去来するのである。