貨幣乗数について一言

 何やら一日数件しかアクセスの無いこの場末ブログがえらい勢いでアクセスしていただいているのですが、付利が付いている状況で不良資産を買い上げてマネーを供給すればこのような事態になるのは自然なことです。世界的な金融危機の状況で銀行がお金を貸そうとはしない状況であれば尚更でしょう。さて、各種スプレッドも一頃の状況と比べて落ち着いているわけですし、株価も上がってきました。これは好ましい傾向です。
 FRB米国債の買いきりも導入済みで、今後も買いきり額を増やそうという格好です。本格的に金融緩和にアクセルを踏み始めてまだ一年も経たないのに「いつまでジャブジャブすれば良いのか?」とか云々するのは早すぎやしませんかね?金融政策の効果が発現するのは1年〜1年半後が目処ですよ?まぁそれでも日銀の量的緩和と比べれば効果は高いですね。何しろ米国はデフレ突入していませんので。
 FRBの行っている金融政策は、A)急激な信用危機を抑制すると言う意味合いで市場に滞留する不良資産を買い取り、マネーを供給するという策と、B)実体経済の悪化に対して長期金利に働きかけることで資本コストを下げるという策の二つが混在する形でなされているものと理解しています。A)及びB)は共に中央銀行のバランスシートを拡大させ、そしてA)及びB)は危機が緩和することでバランスシートを縮小させるという効果をもたらします。何が生じているのかを解釈するには、A)とB)の二つのルートのどちらにFRBは重点を置いて政策を行っているかという視点です。現状、段々とA)からB)へと力点を移しつつあると思いますがいかがでしょうか。更に、この金融緩和の上に立って、オバマの財政政策が今後数年間に渡って発動され、実体経済の下支えをしていくという訳です。
 まだ、現状の経済状況でリセッションが収まっていくと見做すのは早すぎると思いますし、恐らくは失業率悪化による更なる消費の下押しの状況が今後広がるかどうかを判断しながら、追加的な財政政策を行っていくということになるのではないでしょうか。懸念するのは、今年年央から後半にかけて米国以外の国で金融不安が再燃し、そのことが実体経済の悪化から沈静化した金融状況を再度不安定化させるという可能性です。又リセッションからの早すぎる底入れ判断に基づいて今度は財政赤字拡大懸念から引締め政策に転じるという可能性です。勿論バーナンキやC.ローマーはそのような事実は承知済みでしょうが、政治の世界では何が生じるのか分からない。1937年恐慌のように一難去って又一難という事態が生じないとは言い切れないのではと思います。