二〇世紀厨某−本格サバイバル経済活劇

 日本が高度成長期から安定成長期に入る過渡期であった1970年代。70年代初期にはグレート・インフレーションに見舞われたが、二度目のオイルショックではインフレ期待を抑えこむことに成功し、高度成長期の10%程度の成長は不可能になったとは言え、4〜5%程度の経済成長を達成しており、現在から見れば夢と希望に満ちあふれた時代。
 当時、少年たちが空想した世界は世界経済滅亡をもくろむ悪の組織(リフレ氏ね氏ね団)の存在であり、東京を破壊し尽くす深刻なデフレーションという魔物が世紀末に出現するというものであった。そして世界は混沌とし、滅亡に向かっていく。それに立ち向かい地球を救う、勧善懲悪の正義のヒーローとその仲間たち。こんな下らないストーリーを“余言之書”と、少年たちは名付けた。大人になるにつれ、そんな空想の記憶は薄れていく。
 しかし、1997年、我が国が長期停滞からデフレに突入すると、お得意先一家の失踪や幼なじみの死をきっかけに、当時の少年たちの記憶が次第に呼び覚まされていく。そして、サブプライムローン問題をはじめとする世界各地の異変が、昔幼い頃空想した“余言之書”通りに起こっていることに気づく。出来事に必ず絡んでくる謎の男“厨銀”との出会いによって、全ての歯車は回り出す。
 秘密ルートから、余言之書及び真余言之書の概要を入手したので、以下、その内容を示そう。極秘文献らしいので軽々しく公開してはいけないのだろうが、場末武路愚なら問題ないだろう。

<余言之書>
・米国のある特定地域を中心に信用市場を破壊する証券化商品(ABS,CDO,CDS)が散布され、商品の価格暴落とともに大惨事が生じる。
・英国をはじめとする欧州各国で銀行の取り付け騒ぎが生じる。
証券化商品の暴落は信用危機・カウンターパーティリスクの顕在化を促し、銀行間市場では日々の資金繰り難が深刻化する。
・のろしが上がる(国会議事堂が筋肉経済主義派により占拠・爆破される)。
・某年某月、東京にアングルモアの大魔王が襲来。世界各地で深刻な不況をもたらす強烈な実体経済収縮兵器(リフレ殺し)が散布される。
・リフレに目覚めた数人の戦士が立ち上がる。誰なのかは不明だが、遥かかなたの世界大恐慌の原因を正しく見通した一派といわれている。

<真余言之書>
・集会で救世主が暗殺される。
・万博が開かれる。
・リリリンと電話が鳴り(後に利万武羅座亜須証券の倒産だと言われるが不明)、世界総デフレ化計画の準備が整う。
・スーツケースを持ったセールスマン(インフレファイター、別名財政赤字懸念論者)が株価回復、金融危機が一段落した世界で中銀総裁を交代させ、秘儀「超絶利上げ」を行わせる。そして世界中で清算主義というウィルスを散布し始め、人々は「経済成長あきらめ病」に陥る。
・女神が天国か地獄をたずさえて光臨する。
・2015年で西暦が終わり、「厨銀」暦が採用される。
・世界大統領が誕生する。

<真余言之書 最後之頁>
・アングルモアの大魔王に秘密基地が踏み潰された時、反陽子爆弾で世界は滅びる。

※ネタ・チラシの裏なのであしからず。