郵政民営化の是非

「改革と展望」の経済シミュレーションについて書くつもりだったのですが、衆院解散の事態となり今後小泉内閣がどうなるかわかりませんので、またの機会に書きたいと思っています。

ともあれ、小泉氏が「郵政民営化」が争点だと言いだした事、自民党造反議員に対して大物(?)対抗馬を小出しに発表していくことで、何だか野党の位置づけが今一分からなくなってしまっている現状です。何だかマスコミも含めて小泉氏の都合の良い方向に視線を向けさせられているような気がしてならないこのごろですが・・如何でしょう?

さて、小泉氏自ら「郵政民営化」が争点だと言っている訳ですので、「郵政民営化」の是非について考えてみることにしたいと思います。というのも(私も含む)国民レベルでは、「郵政民営化」賛成派はこれにより構造改革が推し進められて郵政事業の民営化がはかられれば無駄がなくなるんだと考え、反対派は細やかな郵便関連サービスが得られないのではといったイメージに基づく考えにより是非を議論しているように感じるからです。

民営化を進めるにはまず持って目的が必要であり、手段である民営化を行うことで確固たる結果が得られるという意味において正当化されるものです。

郵政民営化の基本方針には郵政民営化を進める目的として、「公的部門に流れていた資金を民間部門に流し、国民の貯蓄を経済の活性化につなげることが可能になる」点を挙げています。ただこの議論には(東京大学岩本康志教授が指摘するように)幾つか問題点が指摘されています。

まず、問題点としては国民から郵便貯金という形で集められた資金が2001年の財政投融資の改革により、郵貯は財投から切り離されて全額自主運用が認められるようになったという事です。現在、郵貯の資金の多くが財投(特殊法人等)に流れているのであれば、公的機関である郵貯に介入することで財投への資金運用をなくし、民間資金での運用を進めるよう指示すれば良い訳です。この場合の改革は郵貯改革であって、民営化を行わずしても可能だと考えられます。

さらに自主運用が他の圧力により適正になされておらず民間資金の活用がうまくなされていないのであれば、その圧力を是正する事が必要でしょう。本来の目的である公的部門への資金の偏りを是正するのであれば、特殊法人の事業の見直し、財政のスリム化(国債発行の是正)といった点の方が有効であると思います。

以上の点からすると、郵政民営化は手段としては正当でなく、本来の目的を達成するには別の手段が必要であろうと推察されます。逆に郵貯自体の運用を厳格化し、資金調達を国債発行ではなく郵貯を基本にしたものに据えていくこともあり得ると思います。一方で民営化することにより積極的に国債の販売窓口になる方法もあり得ますが、民営化に伴い生じる不確定要素の大きさを考慮すれば、目的に対する手段は違うものであるべきです。

小泉氏の政治手法やら、きちんとした説明がなされていないといった批判ではなく、目的に沿った手段としての政策の是非を国会できちんと論じてもらいたいものです。