GDPの中身を見てみよう(消費)

少し時節にのっとった駄文を書いてきましたが、今日は少し趣向を変えてみようと思います。備忘的な側面が強いのですが、確認ということです。


1.GDP統計から伺える消費の動き
経済の動きを見ていく際には、やはりまず統計から虚心坦懐に何が言えるのかを把握するのが必要でしょう。ということで、GDPの6割程の水準を占める消費、特に家計消費の動きをみていくことにします。


GDPの6割程のボリュームがある訳ですので、景気にはかなりの影響をもたらしています。そのため、90年以降の不況の際には、「将来不安から消費が低迷するという構造的要因がある」との指摘もされています。まずはこの点について確認してみます。



消費はなぜ変化するのか、消費の原因は何かということですが、消費は所得がなくては出来ない訳ですから所得の動向と切っても切れない関係にあります。所得といっても色々あります。私を含むサラリーマンなら勤労者所得が所得の源泉でしょうし、農家や自営業の方は自分で得た利潤が所得の源泉でしょう。さらには財テクで稼ぐという方もいる訳です。



消費の動きを知る場合には、消費額そのものではなく、所得の動向も考慮する必要がある為、平均消費性向(消費額を所得で割った値)を見ていくのが便利です。将来に不安を抱えているのであれば、所得に対する消費の割合を減らし、貯蓄に回るという行動をとることが考えられます。

1980年から2003年までの平均消費性向をグラフにしてみると、90年代に入ってから平均消費性向は上昇傾向にあります。つまり所得に占める消費の割合は上がっており、マクロで見た場合には不安を抱えて消費を減らしているという話にはならないわけです。

また参考までに価格指数として家計消費デフレータの値を挙げていますが、家計消費デフレータは急激に減少しつづけており、デフレが進行していることもわかります。


平均消費性向の変化の原因を探ってみると90年以降の平均消費性向の上昇は、97年までは概ね消費と所得の双方が上昇した結果であることが分かります。また97年以降の平均消費性向の増加は、消費と比較して所得の減少幅が大きいことによるものだということが分かります。


2.結論

結局、平均消費性向の動きから伺えるものは近年の平均消費性向の減少は、消費の減少を上回る所得の減少が大きく影響しており、将来不安から消費を減らしているという議論は怪しいということになります。


3.参考

田中秀臣著、「経済論戦の読み方」、講談社現代新書

・清水谷 諭著、「期待と不確実性の経済学」、日本経済新聞社