Carlo A. Favero,Applied Macroeconometrics

本の紹介ばかりですみません。中々エントリしたい話題までたどり着けない毎日なのですが・・・。こちらの本は以前紹介した加藤氏の新刊の良い導入になるのではないかと思って購入。大体ざっと読みましたが、戦後の計量経済学の流れを踏まえつつ、動学マクロのカリブレーションまで導いてくれる良書だと思います。結構Eviewsのコマンドや実例に基づく推計例を紹介しながら解説がなされるのでとっつきやすいのも魅力でしょうか。そして参考文献リストが有難いところです。さらにちょっと数式展開から遠ざかり気味の僕のような人間にとっては適度に分かりやすい記述も魅力です。

 内容をざっと敷衍すると、まず最初にソローモデルに即しながら古典的な推計のツール(OLS等々)を適用した際の推計が紹介されています。Mankiw,Romer and Weil(1992)ですね。次に紹介されるのが、時系列データの持つ特性についてです。時系列データはトレンドを有しているわけですが、単位根・共和分といった特性をどのように扱っていくかという話題。そして古典的なマクロモデルの構造推定(Cowles Commission Approach)、誤差修正モデルを駆使したLSEアプローチと移っていきます。このあたりはIS-LMモデルに即した推計例が織り込まれつつ解説されています。次に話題になってくるのが、変数間の統計的な関係性を扱っていくVAR、VECMといった話題です。以前紹介した宮尾龍蔵氏の著書もVAR、VECMのラインにそった実証分析を行っているわけですが、実証分析自体は非常な労作だと思うのですが、ただVAR、VECMといった話題はあくまで理論というよりは統計的な関係性に主眼が置かれているので計測結果から即結論を導き出すのはちょっと無理があるんじゃないかな・・と思うわけです*1
 本書ではその点をクリアしていく試みとして、動学マクロ理論の実証に欠かせないdeep parameter(by Lucas)の推計手法が紹介されています。つまりGMMです。散々入院時代にやりましたが、本書では異時点間の期待効用を最大化するという消費者の行動から導かれるオイラー方程式のGMMを用いた推計例が紹介されています。そして、推計されたdeep parameterを前提としながら、動学モデルを想定して、金融政策における反応関数のパラメータ(expectational parameter)をカリブレートしていく手法、最後にシミュレーション分析が紹介されます。カリブレートにはMatlabが使われているわけですが、GAMS等でも出来そうな感じです。
 どの手法が望ましい(正しい)かは勿論目的に応じて異なる、ということなのかなぁと思いますが、古典的な計量経済学の復習をかねながら、現代的なトピックまで解説してくれるので分かりやすいですね。

Applied Macroeconometrics

Applied Macroeconometrics

*1:この点はより詳しい方のコメントが欲しいところです。あくまで僕の感想。