やりがいのある仕事とは。

 休業した筈ですが、少し戯言。本田由紀先生がやりがいのある仕事についてかかれています(岩波「世界」http://www.iwanami.co.jp/sekai/index.html)。僕も仕事なるものと格闘して十年が経過したわけです。お客さんにサンドバックにされることもしばしば?ですし、そんな中で何とかしがみついているのがやっとの状況ですが、それはさておいてまずは以下の抜粋をお読み下さい*1

 

 自分がもともと好きなことを仕事にする、自分の創意工夫で仕事のやり方を決められる、人のためになって喜んでもらえる、仲間と一緒に目標を追求する…。そんな〈やりがい〉のある仕事ができればなぁと、かなり多くの若い人が思っているのではないでしょうか。それは素晴らしいことだ、理想的だと。

 そう感じがちな理由は、そのような仕事が稀少に見えるからでもあります。働くということは、やりたくもないことを、言われるがままに、何の意味があるかもわからずに、孤独に黙々とこなさなければならないことであり、それに自分が耐えていけるかどうか不安でしょうがない。こういう気持ちが若い人のなかには広く見受けられますし、実際にそのような仕事の現実があることも確かです。だからこそ、それとは反対の、上に書いたような仕事に強く魅力を感じることになるのでしょう。

 でも、もしそんな仕事が差し出してくる無限のような〈やりがい〉に、我を忘れてはまりこんでしまったら?そして、〈やりがい〉がある素晴らしい仕事なのだから、給料や休みは乏しくてもいいだろうと雇う側に言われたら? ある居酒屋チェーンの経営陣のひとりは、「うちはお金を稼げない仕事ですが、夢が持て、自分の成長を感じられます」と明言しています。ある教育産業では、塾講師を雇う際の面接で、応募者が給料や休みなどの労働条件について口に出したら採用しないと言います。それでいいのでしょうか。

〈やりがい〉があるように見える仕事とは、実は低賃金や不安定な雇用であるにもかかわらず、きわめて長い労働時間やエネルギーを労働者から調達しようとするために、巧妙にしくまれたものであるかもしれないのです。それに踊らされてはなりません。仕事のからくりを見抜き、同じ職種や職場に従事する者が協力し合ってそれに対抗していく必要があるのです。

 <やりがい>の裏にあるかもしれない仕事のからくり・・・って言いますがね。そもそもやりがいなんてもんは己で見つけるもんなんですよ。別に労働条件が悪くたってそれでその人が満足しているのなら良いんですよ。違いますか?「仕事」として成り立っているものは皆「仕事」としてやることに意味があるからこそ「仕事」として成立しているのです。研究嫌いな人が「大学で先生をするのはやりがいがあって素晴らしい仕事だから是非」と言われて大学で先生をしてもそりゃ苦痛そのものです。
 僕の仕事観で恐縮ですが、「やりがい」云々はその人個人が時間をかけて見つけていくものです。他の人がなんていおうともその仕事にプライドを持ち、やりがいを感じること・・そういう仕事を見つけることが重要なのではないのでしょうか。あれこれ人が言ったところで最終的に判断するのは本人です。そして自分がある仕事を選んだ以上、それに「やりがい」がもてるようになるまでは努力しなくてはいけないのです。勿論先の例のように全く不向きだと判断すれば、それは自分の責任で他の仕事を選択すべきでしょう。別にそんなことは無駄にはならないと思います。だって「やりがいのある仕事」にはっきりと近づいているじゃないですか。

 ここで問題なのは、「やりがい」のある仕事とみんなが「やりたい」仕事とは違うことです。本田先生はどうやら皆がやりたい仕事=「やりがい」のある仕事と仮定してお話を進めているようにも思います。皆がやりたい仕事ならば、そこに到達するのは容易ではないでしょう。だって競争者が多いわけですから、他の人から見て「やりたい」仕事に就くのならばその分努力するなり、才能が無くっちゃ駄目です。もし周りの先輩が「やりたい」仕事をしているのなら、その人に近づくよう、自分もそんな仕事が出来るよう組織で生き残っていかなくては駄目です。それで「やりたい」と思っていた仕事に辿りついて、果たして本人が「やりがい」のある仕事にたどり着いたのかは知りませんが。
 
 「「やりがい」がありますよ〜」と宣伝されている仕事の裏には労働条件が劣悪な仕事もあるからご注意、とのご指摘なのでしょうが、「やりがい」があるなしは個人が判断するものです。居酒屋チェーン店で働くことがそんなに危険なのでしょうか。僕にはそんな失礼なことはいえません。だって自分が仲間と楽しくお酒を飲み、そして時には憂さ晴らしをする場所を提供してくれる貴重な場所で働いている方たちですよ?居酒屋チェーンと塾講師の例を挙げていますが、人によりますが大学教員だってあてはまらないですかね?

 くどくどと書いてしまいましたが、要は僕が言いたいのは「やりがいがある仕事」なんて自分で見つけるしかない、って単純なことです。労働条件が気になるのならきちんと聞けば良いのです。自分がその場から抜けたいのであれば自分が強くなるしかない、そんな風に僕は思いますし、自分の裁量が高まり、自分が生み出したものでお客さんを満足させ、自らが好きな仕事というのがやりがいのある仕事だとすれば、尚更己がしっかりしている必要があるのではないでしょうかね。
 
 
 

*1:mixiでのとある方のお話のパクリ・・ですみません