参院選と今後の経済政策の行方

 大方の見方どおり、参院選自民党が大敗した。この過程においては、マスコミ等で繰り返し報道されていた「自民危うし」報道が大きく民主党に票を与えたという影響も無視できないだろう。
 さて、参院選自民党が大敗したという事実は何をもたらすのだろうか。一つは意思決定の混乱と長期間化である。参院で野党が多数を占めたため、衆院で可決された議論が参院で否決され、さらに衆院で再度議論されるという事態が多数発生することは容易に想像されるところである。野党側からみれば、与党が強引に採決した案件に対して一定の影響力を持つことが可能となる。だが、野党第一党である民主党も単体では過半数に届かないという状況は変わらない点も直視すべきだろう。野党が連携して与党の政策に対するということを前提にしても現状では実効性を伴った形での影響力を有せないことを考えると、早い段階で衆参逆転というねじれ現象を解消していくことが必要だろう。橋本首相が退陣に追い込まれた98年時を大きく下回る30議席台となってしまった自民党は明確な形で今回の選挙の結果の責任を取るべきである。現状では安倍氏は続投の構えを見せているが、今回の選挙結果は安倍氏の周辺に居る人物ではなく、まさに安倍氏自身の責任が問われているのではないだろうか。
 安倍政権が基本的に小泉政権の路線を継承しつつ、彼らの言う「構造改革」を進めているのは事実だが、勇ましい掛け声とは裏腹に直近の実態経済にインパクトを与えうる経済政策は進められてこなかったと感じる。デフレ脱却のためには、財政政策と金融政策という経済政策の両輪が適切なポリシーミックスを伴いつつ進められることが必須である。現状を考えると財政政策の手足は縛られた状況であるため、金融政策が緩和的に維持されることが必要だろうが、参院選の結果「上げ潮」派の影響力が低下することは今後利上げがスムーズになされることに繋がっていく。若干皮肉っぽく述べれば、経済に逆噴射をもたらすポリシーミックスが成立する可能性すらある。
 今後財政政策に多くを期待できず、寧ろ国民への負担感が増す可能性が高いことを考慮すれば、利上げは実態経済への下押し圧力として作用するだろう。米国経済においてはサブプライム問題がどの程度尾を引くのか次第だが、いずれにせよ本年中には利下げがなされる可能性が高いとすると、これは円高圧力として作用する。今般の景気回復局面における対外経済の寄与が大きいことや定率減税の廃止の影響を考慮すると、さらなる利上げは我が国の経済を下押しすることになるのではないか。
 以上を考慮すれば、参院選での民主党の勝利は、我が国への経済にとっては悪影響である。このような事態にならないことを切に祈る次第である。