雇用関連統計(07年9月値)の結果から

1.労働力調査(9月)の結果
 本日(30日)労働力調査の9月結果(速報値)が公表された。就業者数、失業者数を見ると6422万人(前年同月9万人減)、269万人(前年同月11万人減)と対前年では減少している。季節調整済みの失業率は4.0%となり、8月結果(3.8%)から0.2%ポイント上昇している。横ばいもしくは減少といった予測を出している調査機関が多いが、予想以上に雇用環境の悪化が進んでいると見ることが出来るのではないか。完全失業率が4.0%のラインを割り3%台に回復したのは07年5月であるため、3%台を維持したのは5月から8月までの4ヶ月間ということになる。
 以下の図表は、景気回復局面の03年以降の完全失業率(季節調整済)の月次系列を比較したものである。景気回復に伴い完全失業率は低下傾向にあることがグラフから読み取れるが、03年以降、0.2%ポイントの悪化が2ヶ月連続で生じたのは今回が初めてであること、我が国の景気動向に外需が及ぼす影響が大きく、米国サブプライム問題の影響が10月以降も続くこと、職業業務安定統計の結果を勘案すると完全失業率の悪化は続く可能性が高い。03年以降の変化では3ヶ月続けて完全失業率が悪化したという事実はないため、10月の結果が鍵といえそうだ。

2003年以降の完全失業率(季節調整済)の推移

2.職業業務安定統計(9月)の結果から*1
 今後の雇用動向を分析する際には、職業業務安定統計を見ることも有用である。有効求人倍率は8月及び9月において前月よりも低下(各々マイナス0.01ポイント)している。新規求人数、新規求職申込件数、有効求人数、有効求職者数、就職件数といった指標をみていくと、新規求人数、有効求人数、有効求職者数の三つの指標は前月比で悪化しており、新規求人数は6月以降4ヶ月連続の悪化、有効求人数、有効求職者数は3ヶ月連続で悪化している。職業業務安定統計の結果が完全失業率の数値に先行すると考えれば、10月以降の雇用環境はより悪化する可能性もあるのではないか。

3.日銀政策決定会合への影響
 我が国経済の動向を考えると、海外経済成長率の見通し値の下方修正や、サブプライム問題の沈静化が未だ十分ではなく、米国経済の悪化がアジア経済に影響する可能性から外需の伸びは減少するだろう。また、個人消費の低迷や住宅着工の減少といった要因、さらに1.で見た失業率の悪化といった要因は内需の低迷を示しているといえるだろう。以上からすると、今回も利上げは見送りだろう。さらに年内から年初にかけて特段景気に及ぼす好材料が見当たらず、年度内に利上げを行う可能性はより低くなったものと考えられる。