Dynare(その3)

3.ディープパラメータをベイジアン推計し、かつ変数が非定常過程に従う場合
 昨日のエントリの続き。III)ディープパラメータをベイジアン推計し、かつ変数が非定常過程に従う場合についてコードの流れを見ていくことにします。変数が非定常過程に従う場合とは、例えば、生産性a(t)の対数形が以下の形で定式化されている場合です。

ln(a(t))=γ+ln(a(t-1))+e(t) e(t)〜N(0.σ^2) 

 この場合ln(a(t))はドリフト項γが付いた単位根過程に従っているため、定常ではありません。さらに、生産性が非定常であるとすると、生産性を説明変数として考慮した生産関数で定まる生産額が非定常となります。定常過程に従う形でモデル式を記述すれば、昨日エントリしたI)及びII)の形に持ち込めるので、モデル式の記述の際に変数が定常過程に従うようにトレンドを除去していく形で記述することがポイントになります。

 Dynareにおけるコードが記載されるファイル(.mod)は以下の(1)から(9)の順で記述。

(1)変数名の定義(preamble)
・1.の場合と同様。
・モデル式には観測可能な変数の定常化が考慮されるため、観測可能な変数も合わせて指定。
(2)パラメータ名の定義(preamble)
・2.の場合と同様。(値を定義しない)
(3)モデル式のセットアップ
・1.の場合と同様。
・但し、定常過程に従うように変更を施す。
(4)観測可能な変数の指定
・2.の場合と同様
(5)観測可能な変数にトレンド項を折り込む*1
・観測可能な変数は定数だが、モデル式により確率変数となる場合には、観測可能な変数が従うトレンド項を指定する必要がある。
・observation_trends+セミコロン、観測可能な変数名(トレンド項)+セミコロン、end+セミコロンの順に記述。
(例)観測可能な変数y(t)がトレンド項γを有する場合
・観測可能な変数y(t)をY_obsと記載した場合、以下の形で記述。
 observation_trends;
Y_obs (gamma);
end;
(6)観測可能な変数が単位根を有していることを記述
・観測可能な変数は単位根を有していることを明示する。
・unit_root_vars 観測可能な変数+セミコロンの順に記述。
(例)Y_obsおよびP_obsが単位根を有している場合
・unit_root_vars  Y_obs P_obs;
(7)初期値(定常均衡値)の指定
・1.と同様に、initval+セミコロン、変数=値+セミコロン、end+セミコロン、steady+セミコロンの順に記述する。
・内生変数(varで記述した変数)のうち、観測可能な変数以外の変数について指定する。
(※)varで観測可能な変数を指定した場合には、以下の(9)のestimationで指定したデータファイル、(5)及び(6)を通じて変数が設定される。
(8)パラメータが従う事前分布の指定
・2.と同様。
(9)モデル推計
・2.と同様。

*1:observation_trendは線形トレンドを有する場合に用いる。