面白そうな論文三点等々

メモ代わり。JEL(Journal of Economic Literature)の最新号(2008年3月)から。サマリーはリンク先から読めます。

・Sudhir Anand and Paul Segal,What Do We Know about Global Income Inequality?
 こちらはグローバルな不平等度に関する近年の実証研究のレビュー。90年代以降、グローバルな所得不平等の度合いが高まっているのでは?という議論が経済のグローバル化の進展に伴ってなされているわけですが、本論文は関連する研究の方法論の違いに着目しつつレビューを行っています。不平等度の定義づけ、使用データの違い(所得データか消費データか等々)、相対比較の際にPPP、為替レートのいずれを使うのか、といったところが着目点。中々壮観です。


・Andrew E. Clark, Paul Frijters, and Michael A. Shields,Relative Income,Happiness, and Utility:An Explanation for Easterlin Paradox and Other Puzzles   
 イースタリ−のパラドックスの指摘では、平均的な幸福度合いは一人当たりGDPが大きく増加したとしても変わらないわけですが、一方で個人の所得と個人の主観的な幸福度の認識の間には正の相関があることが指摘されています。この二つを矛盾なく説明することが出来るのかとか、幸福と効用の関係、不幸に関する分析を行っているとのこと。ラスカルさんがご興味ある分野だと思いますが如何?


・Gerard Roland, A Review of Janos Kornai's By Force of Thought:Irregular Memoirs of an Intellectual Journey
昨年僕も一生懸命読んだコルナイ・ヤーノシュの自伝(http://d.hatena.ne.jp/econ-econome/20060724/p1)についてのレビューですね。これを機に少し復習。


 後は、ブックレビューに掲載されているRobert H.Frank The Economic Naturalistとか*1、William Oliver Coleman The Causes,Costs and Compensations of Inflationとか、Deveraux,Lawrence and Watkins Case Studies in US Trade Negotiation Vol1*2あたりの書評はチェックしたいところ。

*1:韓リフ先生のブログでも言及ありましたね。http://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/20080117

*2:コダックの話は日本側の視点から調査したことがあるので個人的に興味を持ってます。