チャールズ・R・モリス「なぜアメリカ経済は崩壊に向かうのか」(山岡洋一訳)

 サブプライム問題にあえぐ米国経済を論じた書籍としては、ブックステーバー「市場リスク 暴落は必然か」と比較してより分かり易い印象。読みやすいので一気に読めてしまう印象です。私が疑問(というか今後どうなるか注視したいと感じている)論点が、「日本語版への序文」に書かれていてビックリしました。つまり、現在の信用危機が「流動性の問題」なのか、「支払能力の問題」なのかという点ですね。勿論、私の意見は前者なのですが、昨今のECBの対応を見ていると今後どうなっていくのかを注視したいところです。
 後は、解説の最後に述べられている、市場規制強化の動きをどうみるかですね。日本経済と世界経済(米国経済)へのサブプライム問題のインプリケーションは当然異なるものであるわけですが、膨張する資本(というものが仮にあればですが)を抑制する手段としての規制強化という話はよくよく注意して扱うべきです。規制は必要とは言っても、米国経済の回復過程においてその規制が足枷になってしまっては元も子もありません。日本の場合には、本書の解説でも言及されているとおり、世界経済への更なる地位低下に繋がる懸念もありえますね。

なぜ、アメリカ経済は崩壊に向かうのか―信用バブルという怪物

なぜ、アメリカ経済は崩壊に向かうのか―信用バブルという怪物

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