田中秀臣『雇用大崩壊』、岩田規久男『世界同時不況』

 いやはや面白く興味深い本が沢山刊行され、ただでさえ忙しいのに更に忙しくなる今日この頃です(笑)やっと原田さんらの『世界経済同時危機』が終盤に差し掛かっているところですが、頭の中で世界経済に何が起こっているのかが具体的にわかりますよね。さて、田中先生の本は献本頂いたのですが(ありがとうございます!)、ラスカルさんの書評によれば大変興味深い本とのこと。楽しみです。我が国へのインパクトとして今後最も懸念されるのが雇用への影響ですが、現状なぜ失業率はそれほど高まっていないのか、どういうことが生じているのかというところはどこかでまとめたいところです。
 そして、岩田先生の新著ですが、これは『金融危機の経済学』を少し別の視点−大恐慌と昭和恐慌の教訓から眺めつつ、失われた10年を経た我が国がどのようにして今般の危機から脱するかを論じた本ですね。僕も以前岩田編『昭和恐慌の研究』を参照しつつエントリを書いたわけです。
 ビックイベントを伴う財政・金融政策の総動員が危機の際には必要なわけです。資産市場の崩壊からデフレを伴う形になると貸出市場の機能不全が生じ、そして停滞が長期化するのは「失われた10年」においてもおなじみの現象であるわけですが、インフレ期待が生じると、物価が好転し、資産市場(株価等)が底をうち、実体経済が好転し、そして金融面での回復が生じていくわけです。我が国の立ち直りも結局はそのような形でした。
 例えば米国の場合は住宅市場が底を打ち、不良債権処理が完全に進まないと実体経済は回復していかない、資産効果に伴う消費の停滞が足かせになる、といわれますが、(望ましい政策が講じられば)そうはならないと僕は見ています。勿論、インフレ期待になんらかの形で働きかけるような政策を行わないと、不況が長期化していき、一般に言われる経路をたどって回復していくことになるのでしょうが。
 例の如くとりとめがなくて恐縮ですが、何とか早めに読了しておきたい本ですね。

雇用大崩壊―失業率10%時代の到来 (生活人新書)

雇用大崩壊―失業率10%時代の到来 (生活人新書)

世界同時不況 (ちくま新書)

世界同時不況 (ちくま新書)

(3/11追記)
 原田さんの著作を興味深く読了。今、岩田先生の「世界同時不況」を読んでますが、本の最初から岩田節を堪能してとても嬉しくなりました(笑。文庫で読みやすいのでオススメ。
 岩田本二冊+竹森本で世界金融危機のメカニズムと日本への影響、更に必要な経済政策を、原田本で世界金融危機と実態経済悪化の世界的ダイナミズムを、田中先生の本で我が国にとって喫緊の課題である雇用の動向を押さえつつ経済政策の新たな視点を得る・・というところでしょうか。さて次はどんな面白い本が出るのやら。