猪木武徳「戦後世界経済史 自由と平等の視点から」
稲葉先生が取り上げていらっしゃった猪木先生の新著。本屋で早速見て即買いしました。戦後の世界経済の流れを特徴的な出来事を中心にして論じていくというものです。申すまでもありませんが、著者の深い学識と思想が行間からにじみ出て、読者に深い味わいを持たせる本ですね。現在のように経済が危機を迎え、今後どのような方向を志向するべきかといった模索が始まっていく時代には、広い視野で潮流を捉えようとするこういった本の有用性は増大するのかなと思います。
本書は、我々が直面する難問の根底には様々な「価値」の選択問題があり、その中でも社会科学では「自由」と「平等」の相克をどう解決していくのかという問いかけこそまず問題とすべきである、経済的な豊かさ、生命、環境、効率といった価値の間の選択に際して、自由と平等の視点からどのような態度で臨むべきか、人にとっての「善き生」とは何か、そういった問題を考えるためのよすがとして書かれたものとのことです。
狭い公理の賄賂に遁走した果てにサイエンスという法衣を纏ったのが経済学だとしたら、寧ろ目指すべきは社会を解釈する学としての「政治経済学」への道でしょうし、政治と経済が複雑に絡みあう現実問題を解こうとするのであれば、基本問題としての経済にのみ関わっている訳にはいかない、そんなことをふと思った次第です。しかし言うは易く行うは難しいですね。
- 作者: 猪木武徳
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2009/05/01
- メディア: 新書
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