鎮目雅人「世界恐慌と経済政策」

 両大戦間期の日本における恐慌と政策対応(日銀レビュー)を書かれた鎮目さんの新著。
 以前エントリでもふれた飯田泰之岡田靖(2004)「昭和恐慌と予想インフレ率の推計」、岩田規久男編『昭和恐慌の研究』における二段階レジーム説(金本位制からの離脱と日銀の国債引き受けがインフレ期待を生み出し、経済停滞を脱した)に対して、鎮目さんの議論は、金本位制離脱は人々のインフレ期待に作用したものの、日銀の国債引き受けが行われた時期は寧ろ人々のインフレ予想は後退する傾向にあったとして、日銀の国債引き受けはインフレへのコミットメントとみなされていなかったという指摘を行っています。
 この点も含めて、本書はじっくり読んでみたいと思います。余談ながら、本書で念頭に置かれている歴史実証的アプローチと現代的な経済分析の手法との融合による過去の経済状況の分析は今後より深められていくべき課題ではないかと思います。本書の中では1930年代に関連する研究として両者の融合を意図した既存研究は中村隆英先生の一連の研究が挙げられているのですが、『昭和恐慌の研究』もそうではないかと思いますね(笑。
 計量的な実証分析を行う場合にはどうしてもデータの不足が付きまとうわけですが、この点についても代替データの適用の可能性といった話題が書かれているようですので、この意味でも勉強してみたい著作です。

世界恐慌と経済政策

世界恐慌と経済政策