計量経済学に関連するお勧め書籍等々(その2)

夏休みな学生さんを尻目に一向に休みの目処が立っていない今日この頃です(泣)。
前回の続きということで、僕が読んだ計量経済学に関するお勧め書籍のご紹介です。和書オンリーです。

1.計量経済学(その他)
白砂堤津耶先生のこの書籍は、計量経済学のテキストブックを片手に知識を定着させるのにお勧め。分かりやすいですし、TSPのとっかかりも得られるのが良いですかね。

例題で学ぶ 初歩からの計量経済学

例題で学ぶ 初歩からの計量経済学

刈谷先生監修、日銀調査統計局編のこちらの本は、時系列手法、季節調整法などに古さはあるものの、勉強した知識を整理するのに有用だと思います。こちらの内容って新しくならないんですかね・・w

計量経済分析の基礎と応用

計量経済分析の基礎と応用

2.応用一般均衡モデル
CGEモデル自体、ブラックボックスっぽい所があると思いますが、「応用一般均衡分析ってそもそも何?」という所から始めるには、ショウブン・ウォーリの以下の本がお勧め。不動点アルゴリズム等についての解説や、古典的な財政モデルに基づくシミュレーションなども紹介されていて実際の例も豊富です。

応用一般均衡分析―理論と実際

応用一般均衡分析―理論と実際

応用一般均衡モデルの一つであるGTAPモデルを適用した分析が数多く掲載・解説されている川崎氏の本。
GTAPモデル自体の解説は(何も知らない状態で読むには)ちょっと難しいかもしれませんが、上掲のショウブン・ウォーリの書籍を読んだ後だと結構取っつきやすいと思います。巻末のGEMPACKの解説も実際に分析を行う上では有用ですね。

応用一般均衡モデルの基礎と応用―経済構造改革のシミュレーション分析

応用一般均衡モデルの基礎と応用―経済構造改革のシミュレーション分析

 CGEモデルのように主要なパラメータをサーベイデータ等から特定化した上で、一時点のデータベースが均衡状態を満たすように他のパラメータをカリブレートする、といった方法でモデルを作成する手法に対して、当然ながら産業別のデータを前提としつつ一般均衡モデルを構築するという手法もあります。
 黒田先生の書籍は、そんな発想に基づいて一般均衡モデルを構築・分析したものです。経済循環の流れを記述する統計としての国民経済計算の役割、産業連関表のデータをベースとしたTFPの推計、産業別トランスログ価格関数の推計、トランスログ型間接効用関数の推計、一般均衡モデルの構築・・と非常に歯ごたえありますが、実証に基づいて安定的なパラメータを得るという視点でモデルを作る際にどうすれば良いかが把握できて有意義な書籍です。しかし安易に手を出さない方が良いかも。

一般均衡の数量分析 (モダン・エコノミックス 19)

一般均衡の数量分析 (モダン・エコノミックス 19)

○計量分析のためのソフトウェア(2)
自分が使った事のあるソフトウエアについてしか書けませんが、SAS、TROLL、GAUSSについてはまずもってマニュアルを読むのが良いのかなと思います*1

(1)GEMPACK
 とっかかりとしては上掲の川崎氏の書籍の巻末が参考になると思いますが、GTAPモデルを用いて実際に計算を行うには対応するソフトウェアであるGEMPACKを購入する必要があります*2。購入に際して必要な情報はGTAPホームページから得られます。https://www.gtap.agecon.purdue.edu/ 
 マニュアルをコツコツ読んでいくしかないのかもしれませんが、お金と時間があるのなら毎年一回開催している泊まりがけのセミナー*3に参加してみるのも一つの手かもしれませんね。あと重要な点ですが、GEMPACKを購入する場合には、あわせて別途FORTRUNのコンパイラを購入する必要があります。こちらも押さえると吉。

(2)GAMS
細江先生らによる以下の書籍が出た事で、GAMSによる一般均衡モデル構築がぐっと敷居の低いものになったような気がします。GAMSを使ってCGEモデルを作ってシミュレーションしたいんだけどなぁ・・とお思いの方はまずこちらを読んでみるのがお勧め。GAMSも小規模な計算を行うのならフリーダウンロードでソフトウェアを入手出来るので、本を読みながら感じをつかんでみるのも良いかもしれませんね。GAMSのホームページはこちら。http://www.gams.com/

テキストブック 応用一般均衡モデリング―プログラムからシミュレーションまで

テキストブック 応用一般均衡モデリング―プログラムからシミュレーションまで

*1:僕自身これらのソフトは最近使っていないので大した事が書けないだけです・・orz..

*2:余談ながらGEMPACKで書かれたプログラムをGAMSのコードに変換する事も可能、そしてその逆も確か可能

*3:確か1週間くらい英語漬けになるんでしたっけ・・。当然ながら僕は行っていません。