グリーンスパンがもたらしたもの

 VOXでBoeri教授とGuiso教授がサブプライム問題に関連して論説を掲載している*1サブプライム危機をもたらした要因の一つとして、グリーンスパンが9.11後の経済停滞・ニューエコノミーの崩壊に際して行った緩和的な金融政策(低金利政策)が挙げられるというものだ。低金利により、これまでの投資からのリターンは減少し、投資家や貸し手はより多くのリターンを得るために大きなリスクをとるようになった。同時に住宅価格は高騰し、これが新たな信用創造をもたらした。

 Boeri教授とGuiso教授は、現在、我々は2001年の不況によりグリーンスパンが選択した過度な緩和策のつけを支払っている*2と述べ、ECBは「グリーンスパンの失敗」を避けるべきだと述べる。最近の主な出来事(Bear Sternsショック、アメリカンホームモーゲージMBS申請停止、ABCPショック等々)に対する米国の対応をみていくと、FEDは問題の根となっている箇所について適切な対応を行っていると思う。WSJバーナンキに対して下した「21世紀の金融政策のマニュアルはまだなく、バーナンキが今それを書いている」という評価は正当だろう。

 今はバーナンキを信じるしかない状況なのは理解している。だが、米国市場で利下げを求める声も根強いというのが気にかかるところである。バーナンキの意図が市場に浸透していないだけで危惧する必要はないのか、もしくは米国住宅市場の問題は現状観察されている以上に深刻であり、それはさらに消費を有意に押し下げるだけの効果を持っているのか、今後そのような懸念があるのかといった点が論点だろう。グリーンスパンの遺産がどのように引き継がれるのか、又、引き継がれないのか、バーナンキの書くマニュアルの帰結が興味深いところである。

*1:http://www.voxeu.org/index.php?q=node/488

*2:成功が後の問題の根となるという論点は多数の論者により指摘されるところ。