梅田望夫「シリコンバレーから将棋を観る」

 何かと話題になっている梅田氏の最新作。率直に言うと僕は梅田氏の著作をこれまで読んだことが無かった。有名な「ウェブ進化論」も胡散臭いなぁ・・と(本を読んでいないけど)正直思っている。そして梅田氏への若い人達の賛意の幾分かに華麗な経歴への憧れが濃厚に影響しているのではとも感じ取れるのもどうにも気に入らない。
 だけど、数年ブログを書いてみたりして国内外の経済に関心を持つ人の議論を読んだり、自分で本を読んで感想を書いたり、時々の話題についてつたないながら考えてみたりすることで格段に頭が整理されて少しは賢くなった?ような気もする。普通では知り合えないような凄い方々とも実際に知り合うことも出来たり、仕事をご一緒したりという僥倖にも恵まれた。実は、奇妙なことに(梅田氏のインタビューを読んだ限りで恐縮だが)氏の主張するネットのプラスの側面の恩恵を自分は大なり小なり得ている訳である。更に付け加えれば、ネットの負の側面も存分に味わった訳である。
 閑話休題。この本だが、実は僕も小学校・中学校のときに先生が将棋好きで見様見真似で当時の入門本を必死で読み、定石を覚えたり将棋番組を観たりして友達と楽しく将棋を指した口である。当時は中原誠全盛の時代だったのだが、羽生氏のプロフェッショナルの特集を見たりすると将棋を楽しんだ過去が楽しく蘇る。
 確かに梅田氏が言うように、将棋の場合、まともに将棋が指せない素人がその楽しさを語ることは出来ないといった風潮がある。そして大人になっても将棋を楽しむのは、他の事に時間が取られるようになると容易なことではない。でも「指さない将棋ファン」が居てもいいじゃないかという著者の指摘と楽しみ方、本書で展開されている現代の将棋の最高峰の人々との対話は結果として著者が年来主張しているネットに対する楽観的な意見を如実に表しているようにも思えるのである。そして本書は「指さない将棋ファン」が楽しく将棋を語るということ、それを「指さない将棋ファン」に面白く語ることに成功していると思う。
 本書を読むと、僕がブログで主に対象としている経済の話題についても実は同じことが成立するのかもしれない、などと感じる。考えてみれば大学で経済学にふれる人の大半はその後社会人となって別の道に進むことになる。その中で経済学の知識から外れていく訳だが、実は経済から全く外れて生きることはほぼ不可能なのも事実だ。そして、色々な動機・目的はあるのだろうが経済を深く知るためには経済学の知見を通じて考えるのが手っ取り早い。とすると、「仕事として経済と向き合う訳ではない経済ファン」もしくは「仕事として経済と向き合う訳ではない経済学ファン」が居るのは別に不思議じゃないし現実もそういうことだ。もし経済に関して不毛な議論が繰り広げられ、著者が指摘するダークサイドの側面があるのだとしたら、楽しみ方にこそ問題があるというべきなのだろうし、そこに介在する人間には幾分かの良識が求められる筈なのだ。
 こう書くと誤解される方もいるかもしれない(そうでないことを祈る)のでオチを書くと、以上は経済学好きなオッサンが楽しく記事を書くための言い訳でもあるのである。

シリコンバレーから将棋を観る―羽生善治と現代

シリコンバレーから将棋を観る―羽生善治と現代

(追記)ちょっとまだ消化不良なのですが、後日この本の読書感想文を書こうかなぁと思っています。正直ネットがどうあるべきかとか梅田氏への賛否についての議論は元々知らないので興味が無いということもあるので別の観点からですが(汗。