バブル/デフレ期の日本経済と経済政策研究

 さて、吉川先生+ESRI編集の第2巻を以前紹介したと思ったら、あれよあれよという間に5巻まで刊行されているこのシリーズですが、3巻、4巻、5巻も勉強になります。3巻についてはどこかに書いたかもしれませんが、意外とマクロ的な話題が重視されている印象。VOXEUでも論説がありましたが、世界的な実体経済の悪化局面を経験すると、従来のフラグメンテーションのプラス効果一辺倒といった評価も少々力点が違ってくるのかもしれませんね。生産の効率化を進めるのは重要だが、2巻の堀論文にもあるように、90年代、そして00年代においてアジアの成長の恩恵を十二分に享受できていたかといえば、そうではないような気が僕にはしています。企業行動も然り。そこから何を目指していくか、といった視点も重要でしょう。4巻についてはまだチェックできていませんが、こちらも楽しみ。後、実はこのシリーズで密かに楽しみなのは6巻と7巻なんだよなぁ・・期待通りなのか分かりませんけど。
 5巻については財政政策の効果や社会資本の経済的影響、税制や社会保障についても検証がなされているようで非常に楽しみです。ただ財政政策の経済的影響といった場合には、減税・公共投資といった政策手段の効果の評価は論争がある分野だと認識していますので、中々一概には言えませんね。過去の財政政策の経験から何が駄目なのか、何が効果無かったのかという話題は知見が蓄積されていますが、現在景気対策としてある程度肯定的に受け取られている直接家計にカネを配るという手法には、僕は積極的に評価していません。消費刺激策と同じで、結局デフレ期待が蔓延している状況では貯蓄に回るだけなのではないか、耐久財の消費にも限界があるのではないか、といった疑問からは抜けられないのです。定額給付金も各種計量分析、アンケート結果からも期待した程は効果が出ていませんね。
 無駄話は兎も角として、様々な論点を集合・取捨選択しつつ、今後この研究全体を鳥瞰した感想を書いてみたいと考えているところです。

不良債権と金融危機 (バブル デフレ期の日本経済と経済政策)

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財政政策と社会保障 (バブル デフレ期の日本経済と経済政策)

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