経済(国内)

鎮目雅人「世界恐慌と経済政策」

両大戦間期の日本における恐慌と政策対応(日銀レビュー)を書かれた鎮目さんの新著。 以前エントリでもふれた飯田泰之・岡田靖(2004)「昭和恐慌と予想インフレ率の推計」、岩田規久男編『昭和恐慌の研究』における二段階レジーム説(金本位制からの離脱と…

小沢鋭仁「「インフレ目標」で結果責任を」(Nikkei Business 09年6月15日号)から

民主党の政治家の中で私が期待する数少ない一人が小沢鋭仁氏である。政策の選択の幅が広がり、対立軸が明確になるという点は二大政党制の利点であると思うのだが、なぜこのような意見が民主党の多数派とならないのか不思議なところだ。氏がNikkei Businessで…

東谷暁「エコノミストは役に立つのか」(文藝春秋7月号)

今月の文藝春秋。書き出しは「ふたたび、エコノミストたちの季節がやってきたらしい」の一語から始まるわけだが、東谷氏も同様の記事を99年と01年に出されていたところを見ると、様々なエコノミストが様々な言説を弄するようになると、それに釣られて生態を…

谷沢永一「高橋亀吉 エコノミストの気概」、山田久「雇用再生」

以前紹介した(と思いますが)石橋湛山関連の本を一通り読んだので、今度は高橋亀吉に関する本を読んでみることに。谷沢氏の書籍は、発売された際に一度読みましたがこの機に再読してみようと思って手にとったもの。氏本人の主観的なバイアスがかなり(どこ…

世界同時不況においてなぜ日本の打撃は深刻なのか?(その1)

Voxeuにも掲載されているが、深尾・袁両氏による分析(深尾京司・袁堂軍「経済危機で日本はなぜこんなに大きな打撃を受けたのか:アジア国際産業連関表による分析」(Hi-Stat Vox No.8)(http://gcoe.ier.hit-u.ac.jp/vox/008.html))は、リーマンショック…

岩田規久男・若田部昌澄「「高橋財政」に学び大胆なリフレ政策を」を読む

今週の週刊東洋経済(2009年6/13特大号)に寄稿された岩田・若田部両氏による論文である。底入れ感が出始めているとは言え、日本経済は戦後最悪の不況に陥っているのは事実である。両氏が指摘するのは、昭和恐慌を超える危機を回避するための大胆なリフレー…

北浦修敏「マクロ経済のシミュレーション分析―財政再建と持続的成長の研究」

北浦さんが携わった実証分析に関する論文(特にフィナンシャル・レビューに掲載されているもの)はいくつか読ませて頂いていますが、本書はこれまでの研究成果を纏められたもののように推察します。これはチェックしなくてはなぁ。財政支出乗数の分析や税収弾…

大恐慌期のデフレから世界経済はどのようにして脱却したのか?

2008年9月のリーマンショック以降の金融危機と実体経済の悪化は、2009年6月の現時点において与謝野大臣の「景気底打ち」発言に見られるように少し明るさが見られる、という状況なのかもしれない。尤も、2009年1〜3月が底打ちのタイミングであったとしても、…

「アニマルスピリット」の読み方?

本日早速アカロフ・シラーの「アニマルスピリット」を購入しました。日本語版はサイズが小さい!というのが第一印象。この本に限って言うと、「はじめに」で展開されているマクロ経済学におけるアニマルスピリットの重要性についての指摘を読んだ後で、山形…

4月労働力調査、消費者物価指数から

月末恒例のこれらの統計の公表がなされると今月も早終わりかと感じる。さて、前回公表の値よりも悪化することは容易に予想できるわけだが、まさに予想通りの状況であった。 消費者物価指数から見ていこう。4月分の値は総合指数が前月比0.1%上昇、前年同月比…

ポール・クルーグマン(大野和基訳)『危機突破の経済学』

クルーグマンの話題のついでということで(笑。報道2001でも書影が出ていましたね。PHPから出版されるということは、Voice等での対談+αを纏めたものではないかと思います。論説の内容もさることながら、楽しみなのは若田部先生が解説を書かれている点でしょ…

駄目だこりゃ

新報道2001でクルーグマンが語るとのことだったので、余り期待してはいませんでしたが、やはり酷い番組になってしまったようですね。与謝野さんや吉川先生と対談するのであれば、対談の模様を編集なしできちんと放映するのが番組の責任です。 本件についての…

アカロフ・シラー(山形浩生訳)「アニマルスピリット 人間の心理がマクロ経済を動かす」

山形さんのお知らせでも予告がされていたところですが、ついに日本語訳が出ましたねw 読書感想文を書こうと思っていたのですが、遅すぎたかw オススメ。アニマルスピリット作者: ジョージ・A・アカロフ,ロバート・シラー,山形浩生出版社/メーカー: 東洋経…

安達誠司「恐慌脱出−危機克服は歴史に学べ」を読む。

本書は現代の金融危機についての概観を行いつつ、過去幾多生じた金融危機の経験から経済危機を克服するには何をすべきなのか、世界経済の回復の道筋、日本の回復過程、そして将来のリスク要因を論じた本である。経済危機の展開の中で乱立する経済危機本、「…

古本で購入

所謂「日銀理論」に対する系統的な批判の書である岩田先生の本。手元になかったので購入。金融政策の経済学―「日銀理論」の検証作者: 岩田規久男出版社/メーカー: 日経発売日: 1993/08メディア: ハードカバー クリック: 3回この商品を含むブログ (5件) を見…

小沢氏辞任に思う。

正直驚いた。というのは、なぜこのタイミングで辞任するか理由が分からないためである。 民主党内で小沢降ろしが本格化しておりやむにやまれずに辞任に至ったというのは考えがたいように思う。というのは、今回の騒動に際して小沢氏に批判的な立場であったの…

Voice6月号

何かと面白い今月号のVoiceですが、既に田中先生が書かれていますね。(http://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/20090511)余力があれば別途エントリしたいところ。 安達さんの論説vs民主党大塚氏の論説に限らず、対照的な論説が折り込まれていますので、何が…

完全失業率、消費者物価指数(3月)&海外動向

本日のニュースを見ての雑感ですが、段々とより深刻化の度合いが増してくる感じですね。完全失業率は4.8%、消費者物価指数は前年同月比マイナスですか。原材料価格上昇に伴う影響が剥落すれば元の木阿弥となるのは当然で、この点は以前から予想していたとこ…

水指丈夫「東大を出ると社長になれない」

田中先生も既にご紹介されていますが、本書はオシャレな本といえるでしょう。「東大を出ると社長になれない」というちょっと「お?」と思わせるタイトル、ピンクを基調にすえたオシャレな装丁、そして主人公の和臣が様々な人(萌え要素も満載!)と交わるこ…

武藤敏郎・大和総研『米国発金融再編の衝撃』

武藤さんと大和総研の方々が書かれた本。以前紹介した原田さん・大和総研の書籍(世界経済同時危機)が、金融危機に伴う世界経済への影響について、マクロ経済への影響を中心に書いていらっしゃったのに対して、この本は金融危機の中身について詳細に纏めら…

安達誠司「恐慌脱出−危機克服は歴史に学べ」

安達さんの新著。来週ぐらいに刊行されるとのお話を小耳に挟みましたが、これは楽しみだなぁ。今読んでいる本を早く読まないと追いつかなさそうですが(汗。どこにも案内が出てませんので、書影など出たら又アップする予定。ゴールデンウィークは読書三昧と…

中野剛志「恐慌の黙示録」

中野さんの本。発売と同時に購入したのですが、まだまだ積読状態です。現在の状況が恐慌なのかどうかといわれると、不況ではあっても恐慌だという実感は正直ありません。本書は、ミンスキー、ヴェブレン、ヒルファーディング、ケインズ、シュンペーターの5…

産業連関表からみた各需要項目の影響分析

輸出の経済成長への寄与をどのように見たらよいのだろうか。以下、平成17年産業連関表を元にしながら、構造分析を行ってみよう。注意すべきは輸入の持つ意味である。1.モデルと競争輸入型、非競争輸入型の違いについて 産業連関表を用いるにあたってモデルを…

若田部昌澄「日銀券ルール」の誤謬」を読む。

久々に日銀ネタ。ドラエモンさんが去り、荒れてしまった某掲示板でも日銀券ルールについて親切に答えていた方が居たが、白川総裁がこのタイミングで「日銀券ルール」を持ち出したのは、量的緩和導入に反対していた当時の白川氏がこのような事態に対して用意…

「特集 人間の顔をした資本主義はどこにある」を読む。

本日発売の中央公論5月号は「特集 人間の顔をした資本主義はどこにある」と題して、西部邁・柄谷行人両氏の対談(恐慌・国家・資本主義)、堂目卓生教授の「いま蘇るアダム・スミスの思想」、中村隆英・竹森俊平両教授の対談「昭和の教訓に何を学ぶ」が掲載…

朝日新聞「変転経済」取材班編「失われた<20年>」

ラスカルさんが確か少し前にこの本についてのエントリをされていたと記憶していますが、本書はさまざまな方へのインタビューを交えながら、現代へのエポックメイキングとなっている出来事を焦点としつつわかりやすく纏めた本です。こういった本は僕は好きで…

長幸男「石橋湛山の経済思想」、「昭和恐慌−日本ファシズム前夜」

長先生の新著をご覧になったと某ご連絡で知ったのですが、「石橋湛山の経済思想」、どうやら明日発売なんだろうか。既に発売されておりました。八重洲ブックセンターでゲット。とても楽しみです。 長先生と言えば僕の中では「昭和恐慌−日本ファシズム前夜」…

東谷暁「日本経済の突破口」

本書は『正論』に収められた東谷氏の論説を収めたものである。はっきりといえば貴重な時間を割いて読むべき本ではないし、無理解に基づく記述も多いのでお勧めはしない。こんな評論が売れるのなら俺でも書けると放言してみたいところだ。 個人的な興味として…

岩田規久男「金融危機の経済学」を読む(その2)

(その1)では、本書の中の一つ目の論点である、サブプライムローン問題の本質は何だったのかという点について敷衍した。(その2)では二つ目の論点である、サブプライムローン問題がなぜ世界金融危機を引き起こしたのか、そして三つ目の論点である各国の政…

増田悦佐「格差社会論はウソである」

「あ〜(笑)」とお思いの方も居るのかもしれません*1が、今読んでいるのが増田さんの新著であるこの本。面白いですね。読んでいていろんな疑問や発想がわいてくる本って中々ないものです。イメージとして言うと「通説・常識」が適度に破壊され、そのことが…