藤井眞理子「金融革新と市場危機」、福岡正夫・鈴木淑夫編「危機の日本経済」

最近刊行された藤井先生の本。ブラックマンデー、LCTM、そして日本のバブル崩壊とを対比しつつ、現在の金融危機について分かりやすく説明されています。さらさらと読みやすい本ですね。本書にも記載されているのですが、金融は経済システムの一部であるため…

安達誠司「恐慌脱出−危機克服は歴史に学べ」を読む。

本書は現代の金融危機についての概観を行いつつ、過去幾多生じた金融危機の経験から経済危機を克服するには何をすべきなのか、世界経済の回復の道筋、日本の回復過程、そして将来のリスク要因を論じた本である。経済危機の展開の中で乱立する経済危機本、「…

John B. Taylor, Getting Off Track:How Government Actions and Interventions Caused, Prolonged, and Worsened the Financial Crisis

テイラー先生の新著。円高効果もありまして邦書を買うよりも安価なので、早速購入しました。内容はというとタイトルどおりな訳ですが、政府の政策や介入がいかにして金融危機を引き起こし、長期化かつ悪化させているかというものです。 金融危機に関して様々…

古本で購入

所謂「日銀理論」に対する系統的な批判の書である岩田先生の本。手元になかったので購入。金融政策の経済学―「日銀理論」の検証作者: 岩田規久男出版社/メーカー: 日経発売日: 1993/08メディア: ハードカバー クリック: 3回この商品を含むブログ (5件) を見…

小沢氏辞任に思う。

正直驚いた。というのは、なぜこのタイミングで辞任するか理由が分からないためである。 民主党内で小沢降ろしが本格化しておりやむにやまれずに辞任に至ったというのは考えがたいように思う。というのは、今回の騒動に際して小沢氏に批判的な立場であったの…

貨幣乗数について一言

何やら一日数件しかアクセスの無いこの場末ブログがえらい勢いでアクセスしていただいているのですが、付利が付いている状況で不良資産を買い上げてマネーを供給すればこのような事態になるのは自然なことです。世界的な金融危機の状況で銀行がお金を貸そう…

二〇世紀厨某−本格サバイバル経済活劇

日本が高度成長期から安定成長期に入る過渡期であった1970年代。70年代初期にはグレート・インフレーションに見舞われたが、二度目のオイルショックではインフレ期待を抑えこむことに成功し、高度成長期の10%程度の成長は不可能になったとは言え、4〜5%程…

Voice6月号

何かと面白い今月号のVoiceですが、既に田中先生が書かれていますね。(http://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/20090511)余力があれば別途エントリしたいところ。 安達さんの論説vs民主党大塚氏の論説に限らず、対照的な論説が折り込まれていますので、何が…

完全失業率、消費者物価指数(3月)&海外動向

本日のニュースを見ての雑感ですが、段々とより深刻化の度合いが増してくる感じですね。完全失業率は4.8%、消費者物価指数は前年同月比マイナスですか。原材料価格上昇に伴う影響が剥落すれば元の木阿弥となるのは当然で、この点は以前から予想していたとこ…

水指丈夫「東大を出ると社長になれない」

田中先生も既にご紹介されていますが、本書はオシャレな本といえるでしょう。「東大を出ると社長になれない」というちょっと「お?」と思わせるタイトル、ピンクを基調にすえたオシャレな装丁、そして主人公の和臣が様々な人(萌え要素も満載!)と交わるこ…

武藤敏郎・大和総研『米国発金融再編の衝撃』

武藤さんと大和総研の方々が書かれた本。以前紹介した原田さん・大和総研の書籍(世界経済同時危機)が、金融危機に伴う世界経済への影響について、マクロ経済への影響を中心に書いていらっしゃったのに対して、この本は金融危機の中身について詳細に纏めら…

安達誠司「恐慌脱出−危機克服は歴史に学べ」

安達さんの新著。来週ぐらいに刊行されるとのお話を小耳に挟みましたが、これは楽しみだなぁ。今読んでいる本を早く読まないと追いつかなさそうですが(汗。どこにも案内が出てませんので、書影など出たら又アップする予定。ゴールデンウィークは読書三昧と…

中野剛志「恐慌の黙示録」

中野さんの本。発売と同時に購入したのですが、まだまだ積読状態です。現在の状況が恐慌なのかどうかといわれると、不況ではあっても恐慌だという実感は正直ありません。本書は、ミンスキー、ヴェブレン、ヒルファーディング、ケインズ、シュンペーターの5…

産業連関表からみた各需要項目の影響分析

輸出の経済成長への寄与をどのように見たらよいのだろうか。以下、平成17年産業連関表を元にしながら、構造分析を行ってみよう。注意すべきは輸入の持つ意味である。1.モデルと競争輸入型、非競争輸入型の違いについて 産業連関表を用いるにあたってモデルを…

若田部昌澄「日銀券ルール」の誤謬」を読む。

久々に日銀ネタ。ドラエモンさんが去り、荒れてしまった某掲示板でも日銀券ルールについて親切に答えていた方が居たが、白川総裁がこのタイミングで「日銀券ルール」を持ち出したのは、量的緩和導入に反対していた当時の白川氏がこのような事態に対して用意…

「特集 人間の顔をした資本主義はどこにある」を読む。

本日発売の中央公論5月号は「特集 人間の顔をした資本主義はどこにある」と題して、西部邁・柄谷行人両氏の対談(恐慌・国家・資本主義)、堂目卓生教授の「いま蘇るアダム・スミスの思想」、中村隆英・竹森俊平両教授の対談「昭和の教訓に何を学ぶ」が掲載…

朝日新聞「変転経済」取材班編「失われた<20年>」

ラスカルさんが確か少し前にこの本についてのエントリをされていたと記憶していますが、本書はさまざまな方へのインタビューを交えながら、現代へのエポックメイキングとなっている出来事を焦点としつつわかりやすく纏めた本です。こういった本は僕は好きで…

長幸男「石橋湛山の経済思想」、「昭和恐慌−日本ファシズム前夜」

長先生の新著をご覧になったと某ご連絡で知ったのですが、「石橋湛山の経済思想」、どうやら明日発売なんだろうか。既に発売されておりました。八重洲ブックセンターでゲット。とても楽しみです。 長先生と言えば僕の中では「昭和恐慌−日本ファシズム前夜」…

東谷暁「日本経済の突破口」

本書は『正論』に収められた東谷氏の論説を収めたものである。はっきりといえば貴重な時間を割いて読むべき本ではないし、無理解に基づく記述も多いのでお勧めはしない。こんな評論が売れるのなら俺でも書けると放言してみたいところだ。 個人的な興味として…

西部邁「サンチョ・キホーテの旅」

西部氏の著作に『サンチョ・キホーテの眼』という本があることを知る方は今となっては中々のニシベ通ではないだろうか。学生の頃、政治や社会に関する見方の座標軸として何度も読み、シニカルかつアイロニーを漂わせ、時にはユーモアも感じさせる文体の持つ…

岩田規久男「金融危機の経済学」を読む(その2)

(その1)では、本書の中の一つ目の論点である、サブプライムローン問題の本質は何だったのかという点について敷衍した。(その2)では二つ目の論点である、サブプライムローン問題がなぜ世界金融危機を引き起こしたのか、そして三つ目の論点である各国の政…

お知らせ

4月になりました。これまで所属していた組織を辞め、新しい組織に属することになりまして個人的には再出発です。そのため多少どたばたしていますが、今後も適度に頑張ってブログを続けていきたいと思います。現在修正・加筆中ですが、遅くとも今年中にはこ…

増田悦佐「格差社会論はウソである」

「あ〜(笑)」とお思いの方も居るのかもしれません*1が、今読んでいるのが増田さんの新著であるこの本。面白いですね。読んでいていろんな疑問や発想がわいてくる本って中々ないものです。イメージとして言うと「通説・常識」が適度に破壊され、そのことが…

松尾匡「景気ってなに?」

既に松尾先生のHPでお知らせがあったわけですが、第一回目のコラムがアップされているようなのでご紹介。「景気とは何か」というと、転換点から見た方向性としての景気とか、水準そのものの景気とかそういった話題が頭に浮かぶのですが、この連載では基本的…

岩田規久男「金融危機の経済学」を読む(その1)

本書は著者が「はじめに」で述べているとおり、以下の三つの論点を検討した書籍である。平易に書かれていることから非常に読みやすい書籍だが、その内容は実に豊かであり、一読しただけでは中々全てを味わいつくすことは難しい。さながら一回では堪能しきれ…

雑感

忙しいこともありましてブログはプライベートモードにしておりましたが、数日かけて徐々に読書感想文*1などを上げてみようと思い立った次第です。自分の作業が最優先ですが、よろしければご覧下さい。 *1:原田泰・大和総研『世界経済同時危機』、岩田規久男…

田中秀臣『雇用大崩壊 失業率10%時代の到来』を読む。

本書は「世界同時不況」に陥ったわが国の状況を主に雇用面から扱った書籍である。既に各所で感想が寄せられているところだが、書籍のタイトルに反して、その指摘するさまざまなポイントは重い。以下、本書で指摘されているポイントに即しながら感想を交えつ…

下村治『日本経済成長論』

株価の低迷に注目が集まる昨今でありますが、こんなときこそ手元においておきたい下村治のこの本。下村の著作は既に絶版となっており入手困難なものが多いとのお話は上久保さんの『評伝 下村治』にも出てきますが、こういった著作が再刊されるのは嬉しいです…

田中秀臣『雇用大崩壊』、岩田規久男『世界同時不況』

いやはや面白く興味深い本が沢山刊行され、ただでさえ忙しいのに更に忙しくなる今日この頃です(笑)やっと原田さんらの『世界経済同時危機』が終盤に差し掛かっているところですが、頭の中で世界経済に何が起こっているのかが具体的にわかりますよね。さて…

吉川洋「いまこそ、ケインズとシュンペーターに学べ」、小川一夫「「失われた10年」の真実」

このところいろんな本が出ますね。全然読めてませんが(笑、この二冊は本屋でチェックしてみようかな。吉川先生の本は竹森先生の「経済論戦は蘇る」を彷彿とさせますが、吉川理論の話ですかね。小川先生の本は資料用に購入するというところかな。僕にとって…